中国新聞


食育の推進
まず「地産地消」を柱に


【社説】 健やかな食生活を目指す食育基本法が成立して約一年半。政府は初めての食育白書を閣議決定した。白書は、夕食を家族でとる割合の減少や栄養の偏りなどを指摘。心身ともに食育推進の必要性が高まっているとしている。

 もっとも号令を掛ければ済むような問題ではない。個々人、地域で食のありようを考えていく雰囲気づくりも要る。

 家族だんらんといえば夕べの食卓だろう。白書によると、夕食を毎日一緒にとる家族は二〇〇四年調査で25・9%。一九七六年は36・5%だったから10ポイント以上の減少である。背景には単身世帯の増加、女性の社会進出、外食する機会が増えていることなどがある。

 家族全体、あるいは自らの食生活への目配りが弱くなっているのは間違いない。すべての世代が一日の野菜摂取量の目標とされる三百五十グラムに達していないことも、それを裏付けている。

 白書は子どもの不規則な食事にも懸念を示す。朝食を取らない子は「疲れる」「いらいらする」割合が高いようだ。

 食育の大切さに異議をはさむ人はいないだろう。ただ食育の領域、その目的とも多岐にわたる。栄養バランスの回復は高齢化に伴って増え続ける医療費の節約に通じる。食材の観点からは、地物を優先して食べる「地産地消」の促進は地域の農水産業を元気づけることになろう。

 それらを実現していくには、新鮮で安全性の高い素材を自ら調理できる生活の技術を消費者が持たなければならない。小さいころからの実習、訓練がカギを握る。言うはたやすいが実行となると一朝一夕にいかないのが食育だ。

 白書は先進事例として給食の地場野菜のつみ取りを授業に取り入れた福井県鯖江市を紹介。沖縄、徳島両県の郷土料理を含めた「食事バランスガイド」作成にも目を向けている。

 政府が今春策定した食育推進基本計画を受けて広島県は先月、議員提案で食育基本条例を制定した。条例の骨子は食育推進の総合施策の策定と実施。県民への啓発の一環として十月十九日を「ひろしま食育の日」と定めた。

 全国の農業の縮図といわれる広島県。多種多様な農畜産物を産出する。瀬戸内の魚介類にも恵まれている。食育推進の近道はまず、既に取り組まれている「地産地消」活動をさらに拡充していくことである。

(2006.11.26)


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