中国新聞


米発祥 赤ちゃんと身ぶり使い意思疎通声
ベビーサインで心に余裕


 ■広島でも教室開講 言葉の発達促す

 赤ちゃんと手話やジェスチャーでコミュニケーションを図る「ベビーサイン」が、中国地方でも広がってきている。実際に使っている母親や、特定非営利活動法人(NPO法人)「日本ベビーサイン協会」(神戸市)の認定講師に、良さや使い方のこつを聞いた。(平井敦子)

 広島市南区の一歳六カ月の河角和昌ちゃんは今、およそ四十種類のベビーサインを使って意思表示している、という。

 母親の雅代さん(33)が夜、寝かせようと電気を消すと、片手を頭の上でグーパー、グーパーして「電気」のサイン。「電気をつけて」と訴える。「そんなときは、まだ遊びたいとき。電気をつけて、もう少し遊んであげると、納得して寝るんです」と雅代さん。「サインを出して要求を聞いてもらえると、あまりぐずらずに済む気がします」

 和昌ちゃんが七カ月のとき、「二人で何か楽しめることを始めよう」とベビーサインの教室に通い始めた。九カ月のころから、おなかがすいたら「おっぱい」のサイン、散歩をしていて鳥を見たら「鳥」のサインをするようになった。

 ▽要求理解し対応

 雅代さんにとっては初めての子育て。「世話をするのに精いっぱいの毎日」だった。でも、サインを通じて「この子もちゃんと分かっているんだ、と思えて楽しくなり、余裕が持てるようになった気がします」と振り返る。

 三人の子どもを持つ西区の田川紀美子さん(33)は今年一月から、市内二カ所で、ベビーサイン教室を始めた。これまで参加したのは、一歳前後の子どもたち約四十人。カードや歌、絵本などを使って教えている。

 五歳になる長女が生まれたころは、ベビーサインの教室はなく、独学したが、失敗。今、二歳の二女が生まれたとき、「教室がないなら、自分で講師になろう」と日本ベビーサイン協会で学び、講師に認定された。教室の問い合わせは徐々に増えているという。

 ▽広がる学習の場

 看護師や保健師としての勤務経験もある田川さんは、子どもにどう話し掛けていいのか、戸惑う親が増えているように感じていた。「サインは常に話し掛けながら教え、子どもの言葉の発達につながる。そうやって、コミュニケーションの楽しさを感じてもらえると、うれしい」と期待する。

 ベビーサインは米国で開発され、二〇〇〇年ごろから日本で広がり始めた。同協会の中尾信也事務局長(34)は「今後はゼロ歳児、一歳児を預かる保育所や、妊娠中の人も対象に、ベビーサインを学んでもらう場を設けていきたい」と話している。

 ■押し付けず気長に −認定講師 杉谷さん

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 日本ベビーサイン協会主催の講演会が十一月七日、広島市の東区民文化センターで開かれた。参加した約百四十組の親子を前に、同協会認定講師の杉谷かおりさんが「親子のきずなを強めるツールとして使ってほしい」と強調した。講演の要旨は次の通り。  

 ▽開始目安は6−8ヵ月  

 話ができない赤ちゃんでも、ベビーサインを学べば、赤ちゃんからサインを使って話し掛けることができます。たくさんのサインで、大人とのコミュニケーションの幅は飛躍的に高まります。

 では、ベビーサインのメリットは―。赤ちゃんが要求を分かってもらうことで、泣きわめく理由が減り、育児が少し楽になります。「痛い」というサインができるようになると、大人が気付かない痛みを表現でき、子どもの健康と安全につながります。サインを教えることで赤ちゃんへの語り掛けが増え、話し言葉の発達を促します。

 デメリットはないのですが、親の過剰な期待や押し付けには注意が必要。子どもの負担やプレッシャーになります。できたサインを発表会のように演じさせたりするのは、お薦めできません。

 教え始める時期はお座りができてママの問い掛けに興味を示す六〜八カ月が一つの目安。一歳過ぎても遅くはありません。二歳を過ぎると、言葉を話すようになり、サインは自然にしなくなります。

 教えるときは、ゆっくり、大きく動作をしてください。歌や手遊びの中で楽しく学ぶのもこつ。あせらず、あきらめず、気長にやりましょう。

(2006.12.4)


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