中国新聞


育児・仕事両立支援 職場に浸透
東広島の「サタケ」 全国グランプリ


 ■時短や育休制度充実

 東広島市の精米器メーカー、サタケが今年、仕事と生活が両立しやすい環境づくりに取り組む「ファミリー・フレンドリー企業」として全国グランプリに当たる厚生労働大臣優良賞を受賞した。内閣府の調査で東京都などと並び、総合的な両立支援策の必要性を指摘された広島県。サタケの先進的な取り組みから、働きやすい環境づくりのヒントを探った。(森田裕美)

 午後三時五十分、事務部門の広田祐貴子さん(34)は書類を片付け、席を立った。「お先に失礼します」。周囲も慣れた様子で応じる。家に戻って洗濯物を取り込み、長男(5)と長女(2)を保育所に迎えに行く。同じ会社に勤める夫は東京に単身赴任。「時短制度がなければ、働き続けられなかったと思う」と話す。

 ▽早めの退社OK

 定時の就業時間は午前八時半〜午後五時二十分。時短制度は、子どもが三歳までは二時間、八歳までは三十分間短縮ができ、現在、十五人の社員が利用する。

 制度は、ちょうど長男の育休中だった二〇〇一年にできた。「取ってもいいのだろうか」。当初は不安もあったが、「子どもと接する時間も社会とつながる仕事の時間も大切にしたい。制度を活用し、できるところまでやってみよう」と夫と決意。先駆けとなった。

 「人より先に帰らせてもらうから、遠慮がないと言えば、うそになる。けど、気持ちよく取らせてもらえ、ブランクなく働けるのだから、その分、就業時間はしっかり働こうと思う」。今は利用者が増え、前向きに考えられるようになった。

 ▽男性の取得増加

 同社は〇四年、社内保育室も整備した。時短制度を使わない従業員が対象で、十二人が利用。一時保育や外部の幼稚園などに通う子の延長保育にも対応している。「せっかくの戦力が育児で退職していくのは会社にも社会にも大きな損失」と木谷博郁人事部長。「取り組みを不可能と決めず、どうすれば可能にできるか」と常に知恵を絞る。

 例えば、「女性だけの問題ではない」と、管理職研修や、人事部手作りのポスター掲示で、男性社員の子育て参加へ意識改革にも力を入れる。そのかいあってか、男性が育児休暇を申請しやすい雰囲気もでき、すでに四人が取得。年明け早々、五人目が出る予定だ。

 広報室の滝本明さん(33)は今年八月、専業主婦の妻が二男を出産した日から約一カ月間休んだ。妻が帝王切開で退院が遅れたため、最初の九日間は長男(3)と二人。毎朝、ご飯を食べさせ、家事を済ませて、せきたてられるように病院へ。その後も家事と長男の世話に努めた。「思った以上に育児は大変で、妻の気持ちがよく分かるようになった」と話す。上司の宗貞健広報室長は「男性社員の良い経験にもなる。就業意欲も増す。出張と思ってカバーし合えばいい」と背中を押す。

 地道な取り組みが評価された今回の優良賞受賞。中国地方では一九九九年度のベネッセコーポレーション、〇三年度のマツダに次ぎ三社目の栄誉だ。広島労働局の落合淳一局長は「できるところから取り組めば、企業も変えていけるという一つの見本にしてほしい」と強調している。

 ■広島は最低水準 少子化と男女参画報告書 都道府県ランク

中国5県のタイプ別分類

 内閣府の専門調査会は九月、少子化と男女共同参画に関する社会環境の国内分析報告書をまとめた。都道府県を(1)一九八二〜二〇〇二年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子の数)の減少率(2)〇二年の合計特殊出生率の水準B女性有業率の水準―で七つのタイプに分類。水準が高い「1」から、低い「7」にランク付けした。

 相反すると考えられがちな女性有業率と合計特殊出生率だが、国際的には比例関係にあるとされ、ともに低い日本の中でも、各都道府県は両極の1と7に大きく分かれた。中国地方では、7は広島だけ。逆に島根、鳥取がどちらも高い1で、山口、岡山は2だった。

 タイプ7には、東京、大阪など大都市を持つ都道府県が多く含まれ、調査会は「女性が就労することと、男女が子どもを産み育てることが両立するような社会環境整備」を課題としている。

(2006.12.23)


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