中国新聞


隠岐病院の産婦人科医減
不安募らせる島民


 ■妊婦ら対象に説明会 島外出産17万円助成

 隠岐病院(隠岐の島町)の産婦人科医師が二人から一人に減員され、出産対応をリスクの低い妊婦に制限する問題で、病院を運営する隠岐広域連合(連合長・松田和久隠岐の島町長)は十八日、妊婦や家族を対象にした説明会を開いた。一人体制に縮小する四月から県内初となる助産科を設置し、島外での出産に十七万円を助成する。しかし、妊婦の大半が島外での出産を強いられる「お産の危機」の再来に、島民らは不安を募らせている。(城戸収)

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隠岐病院での出産対応を制限することを報告する松田町長(奥の左から2人目)。右隣は笠木院長

 同町のふれあいセンターであった説明会には、約百人が参加。松田町長は、島でのお産が再開した昨年十月から産婦人科医二人を派遣している県立中央病院(出雲市)が医師不足に陥っている状況を説明し、「これ以上、わがままは言えないと判断した」と述べた。同連合が運営する松江市の宿泊施設「レインボープラザ」を妊婦用宿泊施設として整備したり、現在六十五歳までとする医師採用条件の年齢引き上げを検討することを明らかにした。

 隠岐病院の笠木重人院長は「安全なお産には、より手厚い体制が必要との考えが主流で、離島での一人体制でリスクの高いお産に対応できない」と理解を求めた。

 四月以降、初産をはじめ、早産や出血多量、帝王切開などの経験がある妊婦は松江、出雲市などの病院で出産することになる。九月末までに出産予定の五十五人のうち、七―八割が対象となる見通し。同連合は、離島する妊婦の経済的負担を軽減するため、十七万円を助成する。

 一方、隠岐病院に新たに助産科を創設。産婦人科医、小児科医の支援を受け、助産師八人が正常分娩(ぶんべん)の経験がある妊婦など、リスクが低い出産を取り扱う。

 島で出産できる体制は、わずか五カ月で再び危機的状況を迎えることになった。説明会に会社員の夫(27)と訪れた妊娠八カ月の主婦(27)は「二人目はもう厳しいかもしれない」と顔を曇らせた。

(2007.2.19)


■隠岐病院 産婦人科1人体制へ −4月から県の派遣困難

 産婦人科医二人体制で昨年十月、出産対応を再開した島根県の離島・隠岐の島町の隠岐病院が四月から、一人体制に縮小する見通しであることが、十五日分かった。派遣元の県立中央病院(出雲市)の医師不足のため。初産やリスクが高い出産の場合、隠岐病院で出産できなくなり、妊婦の七―八割は島外での出産を迫られることになる。

 隠岐病院は昨年四月、常勤の産婦人科医がいなくなり、出産対応を中断。県が新たな医師を確保して中央病院からの二人派遣体制を構築し、半年後の十月に出産対応を再開した。しかし、中央病院でも医師の退職などのため医師不足が深刻化。嘱託も含めた十一人で本年度は約千百人の出産を扱うため、隠岐病院への派遣が困難と判断した。

 県や隠岐病院を運営する隠岐広域連合は新たな医師確保を目指すが、現状では厳しい情勢だ。

 隠岐病院では四月以降、院内助産所の開設などを検討し、正常分娩(ぶんべん)での出産経験があるなど受け入れる妊婦を限定する方針。初産や早産といったリスクが伴う場合は島外で出産することになり、県は妊婦の二―三割しか同病院で出産できなくなるとみている。

 同連合は、島外出産する妊婦に滞在費を助成することも検討する。(城戸収)

(2007.2.16)


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