中国新聞


コイの力で はしか撲滅
広島市民球場にPR看板


 小児科医呼びかけ 接種率向上へ設置

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広島市民球場の左翼席に掲げられたはしか撲滅をPRする看板

 広島市民球場に今季から、はしかなどの撲滅を訴える看板がお目見えした。全国の小児科医師有志による広告看板で、中心となったのは、千葉市で小児科を開業する太田文夫さん(55)=広島市安佐南区出身。「カープの快進撃で、はしかへの理解を深めてもらえれば」と願っている。(下手義樹)

 看板は縦一・八メートル、幅十メートル。赤の背景に白い文字で「ワクチン打って 麻しん・風しん完封!」と書かれ、左翼席最上段のポール近くに立てかけられた。広告料や制作費の数百万円は、広島在住の小児科医や、全国の医師仲間ら約百人のカンパで集めた。

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「予防接種など、理解を深めてもらうことがはしか撲滅につながる」と話す太田さん

 太田さんは、全国の小児科医で組織する「はしかゼロ小児科医協議会」の中心的メンバー。二〇〇三年に発足し、〇五、〇六年にも、同様の広告を千葉ロッテマリーンズの本拠地、千葉マリンスタジアムのベンチ上に掲げた。

 国立感染症研究所感染症情報センターの発生動向調査によると、〇六年一年間で、はしかの報告数は五百十九例しかない。しかし、定点調査のポイントに定められている小児科医からの報告に限られているため、太田さんは、実際には把握している件数の十五倍に及ぶのでは、とみる。

 日本では〇六年六月から、はしかや風しんで、一歳児の第一期、五〜七歳未満で小学校就学前の一年間の第二期と、二度のワクチン接種が定期接種に導入された。しかし認知度は低い。太田さんは第二期の接種率は50%に満たないのでは、と懸念している。

 一方で、米国では徹底した予防接種で年間に数十人しか患者が出ないという。太田さんは「日本は大きく遅れていて、乳幼児期に一回接種したから大丈夫と思っている人が多い。国民にもっと関心を持ってもらい、国や自治体にも積極的な対策を取ってもらいたい」と力説している。

 「風呂にまでラジオを持ち込んで聞き入っていた」という四十年来の熱狂的なカープファン。故郷の球場への看板設置を喜び、「カープの打者がレフトに多くの本塁打を打ち、看板をPRしてほしいですね」と期待している。


はしか 麻疹(ましん)ともいい、麻疹ウイルスに感染することで発症する。非常に感染力が強く、免疫がないと100%発症する。1人の患者が12―18人にうつす力があると言われる。くしゃみやせきなどで飛び散ったウイルスに感染し、症状が出るまでの期間は8―12日間。最初の数日間は風邪に似た発熱、鼻水、せきなどの症状が見られ、その後全身に発疹(はっしん)が出て数日間、高熱が続く。抵抗力の弱い乳幼児や老人、他の病気にかかっている人などは死亡することもある。感染症法に基づく5類感染症に指定され、予防接種についても定めている。

(2007.4.4)


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