中国新聞


耐震・少子化で平行線
保護者「補強を」 市教委「財政難」


 柳井市教委が一年前に打ち出した小中学校の統廃合計画が難航している。校舎や体育館の耐震化率アップを迫られていることに加え、将来の児童、生徒数の減少を見込み、小学校を十二校から九校に、中学校を四校から一校にする方針。しかし、今は児童数が減っていない学校の統合に保護者らから疑問の声が上がる。市教委には、学校が消える地域住民の思いも十分にくんだ対応が求められている。

難航する柳井の学校統廃合

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耐震化診断で補強が困難とされた柳北小。市教委は、柳井小と統合の方針を掲げる

 「児童数や校区内の人口が減っているわけでもなく、金がないというだけで統合するのは納得できない。可能なら校舎を補強してもらいたい」。柳北小PTAの山脇武士会長(34)はこう訴える。

 柳北小は二〇〇二年、耐震検査でコンクリート強度が不足し、補強が困難との診断を受けた。市教委は〇三年、約二キロ離れた柳井小と統合する案を提示。PTAは〇五年十二月の総会で存続を求める決定をした。だが、市教委は建て替える予算がないと主張し、話し合いは平行線のままだ。  柳北小の児童数はここ数年、百六十―百五十人で推移。児童の登下校を見守るスクールガードで、学校近くの無職松重博之さん(71)は「地域と小学校は昔から一体。子どもたちの声が聞こえなくなるのは寂しい」と漏らす。

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13年度に児童200人減

 一方、柳井小の児童は約五百四十人。約十二億円をかけて耐震基準をクリアした校舎の建て替えが進み、今春から利用が始まっている。新校舎には、柳北小の約百五十人の受け入れも可能という。

 市内の児童数は、五月現在の約千七百五十人が、ゼロ歳児の入学する一三年度には約千五百五十人へと約二百人減を市教委は予測する。中学生も約九百四十人が約八百三十人になるという。

 また、柳井小と柳井中以外はほとんど一学年一学級。市教委総務課の綿田茂課長(53)は「統合すれば大勢の中で友人も増え、社会性も身に付けられる。スポーツなど課外活動の幅も広がる」と強調。「何よりも安全な校舎で教育を受けてもらいたい」と付け加える。

 市教委の示した計画では、小学校は休校の二校を除き、柳井と柳北のほか、一〇年には鳴門と神西、一二年には余田と新庄を統合。中学校は一一年に柳井西、柳井南、大畠を柳井に統合する。

 市内の校舎や体育館の耐震化率は、〇七年四月現在で62・5%。統合を進め、校舎の補強や体育館の建て替えによって90%台にする考えだ。綿田課長は「基本的に学校統合に賛成する人はいない。しかし、行政の効率化が求められ、市の厳しい立場を客観的にみてほしい」と理解を求める。

1年近く説明会なし

 市教委は、統廃合計画を公表した昨年九月から十月にかけ、中学校区の三カ所で保護者らに説明した。しかし、その後は説明会を開いていない。問題が長引けば、それだけ長く耐震基準に合わない校舎に児童を通わせることになる。時間がかかっても計画通り推進するのか、代替案を模索して早期に解決を図るのか。保護者らと協議を積み重ね、合意を得る努力が欠かせない。(島田俊之)

(2007.9.25)


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