中国新聞


「放課後の居場所を」切実
働く親に立ちはだかる「小学校の壁」


 不十分な預かり制度 広島市に互助組織

 働く親の子育てに立ちはだかる大きな問題として「小学校の壁」がある。保育園のころは夜まで預かってもらっていたのに、小学校に入学した途端に帰宅時間が昼すぎになる。その長い放課後にどう対応するか―。中には仕事を辞めるという選択肢を選ぶ人もいる。放課後の子育て支援の拡充を望む声は切実だ。

 生後五カ月のころから保育園に長男を預けて働き続けてきた広島市安佐南区の主婦(34)は昨年四月の小学校入学を機に仕事を辞めた。「生活リズムも環境もガラッと変わる。仕事と子育ての両立ができるかどうか自信が持てなくなって。それに子どもを預かってもらえる制度も不十分だし」

 広島市の小学一年生の終業時間は学校や曜日によって違うものの、午後二時半―三時半ごろが多い。その後は、ほとんどの小学校区に市が設置する「留守家庭子ども会」で午後五時半まで子どもを預かってもらえる。仕事を辞めた主婦は「保育園なら午後七時ぐらいまで預かってもらえるのに」とため息をつく。

 四〜一歳の三人を保育園に預けている安佐南区の団体職員の女性(33)も「五時半のお迎えにはいくら仕事を頑張っても間に合わない。子どもだけで帰宅、留守番はさせられない」と悩む。小学校入学に向けて不安は募るばかりで「子ども会の時間延長を」と望む。

 厚生労働省の調査では、広島市の留守家庭子ども会などを含む「放課後児童クラブ」の全国の終了時刻は、午後六時までが三分の二を占める。保育園の終了時刻との時間差は一、二時間だ。

 「その一、二時間を何とかしてほしい」。そんな要望に対応する支援策も出てきている。広島市が二〇〇五年九月から導入したファミリーサポートセンター事業。子どもを預けたい人と、預かる人の会員制の互助組織だが、今年四―八月の利用では「留守家庭子ども会の迎えと、帰宅後の預かり」が、最も多かった。全体の四割以上の千五百四十二件に上った。

 サポートセンターの利用者の一人、公務員の藤本由里さん(38)=安佐南区=は小学一年の剛輝くん(6)を、今年四月から近くの中野由美子さん(52)らに預けている。

 剛輝くんは午後四時まで小学校の敷地内にある留守家庭子ども会で過ごし、母親が迎えに来るまで中野さんらの自宅で過ごす。おやつを食べたり、近所を一緒に散歩したり。藤本さんは「ほかに頼る所がなく、本当に助かっている。子どもにとっても癒やしの空間になっているようです」。

 広島市内の保育園でも小学生の預かりに前向きな園が出てきている。ある園は保護者からの要望を受け、今年四月からは留守家庭子ども会終了後の小学生の引き受けを始めた。原則的に卒園児が対象だが、保護者から「慣れている環境で預かってもらえると助かる」との声も出ている。

 子どもも親も安心できる放課後の居場所が地域でもっと広がってくれたら。切実な思いに寄り添うような子育て支援が求められている。(平井敦子)

(2007.10.1)


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