中国新聞


インフルエンザ流行の季節
治療薬 判断冷静に


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<写真左>吸入器(左)で吸入して服用するリレンザ
<写真右>甘い味を付けて飲みやすいタミフル・ドライシロップ

 インフルエンザにかかりやすい季節となった。治療薬タミフルは、異常行動につながる可能性が指摘され、十代への使用が原則として中止されている。それでは九歳以下の子どもたちがインフルエンザにかかった時は、タミフルはどのように処方されるのか。処方しない場合はどう治療するのか。広島県内の小児科医に尋ねた。

タミフル 副作用のリスクも
リレンザ 体力があれば優先

 広島県小児科医会長でもある桑原医院の桑原正彦院長=広島市安佐南区=は、九歳以下のインフルエンザ治療について、三つの選択肢を示す。(1)発症してから四十八時間以内にタミフルを使う(2)タミフルと同じくインフルエンザウイルスの増殖を抑えるリレンザを使う(3)どちらも使わず療養する―の三つだ。

 まず、タミフルを使う場合は「異常行動との因果関係がはっきりしていないため、必要とされる患者に、処方するようになるでしょう」という。体力がない、心臓病やぜんそくなど基礎疾患があるなどの理由で、肺炎や脳症を併発し重症化する可能性が高い患者は、病気を早く治すことが大切だからだ。

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桑原医院で子どもの患者を診察する桑原院長

 桑原院長は「体力があって五歳以上なら、リレンザを優先します」と説明する。

 リレンザは、タミフルが十代の患者には使えないため、使用が増えるとみられる。ただ、自宅でも使える小型の吸入器で一日二回五日間、粉剤を吸入しなければならない。うまく吸入できない幼い子どもには向いていないという。

 どちらも使わない場合はどうすればいいのか。「インフルエンザウイルスは熱に弱いので、なるべく熱を下げないようにして安静にして体力を温存すれば対抗できる」と桑原院長はアドバイスする。

 「薬の効果」と「副作用のリスク」をはかりに掛けて、一人一人の症状や体力に応じて、治療方法を選ぶことになる。しかし、インフルエンザは重症化しなくても高熱が続き、体力を消耗する。

 広島県府中町のますだ小児科の増田宏院長は「基礎疾患などがありインフルエンザによる健康被害のリスクが高い場合を除けば、タミフルの使用は保護者次第ということになる」と説明し、「タミフルの副作用だけでなく、効果も冷静に評価した上で判断してほしい」と求める。

 同医院では、保護者の判断の参考にしてもらおうと、待合室でタミフルの効果と副作用などを説明するチラシを配布している。「インフルエンザと異常行動との関係がはっきりしないため、インフルエンザと診断されたらタミフルを服用してもしなくても、二日間はお子さんを一人にしないようにしてください」と念を押す。  福山市の藤田小児科内科医院の藤田仁志院長は「薬への不安がある時こそ、かかりつけ医との信頼関係が大切」と強調する。「かかりつけ医がいて、既往歴などの基礎情報を分かっていれば、より適切なアドバイスができる。予防接種や健診などを通じて、信頼できるかかりつけ医を見つけておきましょう」と呼び掛けている。(平井敦子)

(2007.12.3)


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