中国新聞


男性の家事・育児参加不足が一因
少子化対策は働き方改革で
減らぬ女性の負担 「パパ支援」の施策必要


photo
ワークライフバランスについて講演するパクさん

 子育て支援をテーマにした「働き方の改革が少子化の流れを変える!」(内閣府など主催)が二十日、広島市中区の県民文化センターであった。東京を拠点に活動するコンサルタント、パク・ジョアン・スックチャさんが講演し、日本の少子化の原因は「男性が家事や育児を担う時間の短さ」を挙げ、ワークライフバランス(仕事と家庭の調和)の推進を説いた。講演内容を紹介する。(平井敦子)

▽広島でパクさん講演

 少子高齢化は今、社会が直面する最も大きな変化だ。それは、単に女性が子どもを産まなくなったのではなく、社会が持続不可能になるサインとみるべきだ。特効薬のない根の深い問題だろう。

 先進国では戦後のベビーブームの後に一九六五年ごろから出生率が下がり、八〇年代半ば以降は北欧、フランス、オランダ、英語圏など出生率が上がった国と、イタリア、スペイン、ドイツ、日本など出生率がさらに下がった国に分かれた。日本の出生率は主要先進国の中で最下位。少子高齢化が進むスピードも世界最速で、背景には日本独特の理由がひそむ。

海外 高い平等意識

 まず、海外をみると、北欧など出生率が上がった国は、総じて「男女平等」の意識が高い。同じ労働であれば同一賃金が定着。労働市場は流動化が進み、転職や休職が不利にならない。女性が妊娠・出産で一度仕事を辞めても、仕事に復帰しやすいし、能力や実績に応じた評価が受けられる。

 アメリカは子育て支援は貧弱なのに、出生率が二以上ある。ゼロ―二歳の保育料は十万―二十万円で、公的なサービスはあまりない。しかし、社会全体で「家族」への価値観が高く、敗者復活が可能と信じる国民性から、子どもの将来にも夢や希望を持ちやすい。結局、「子どもを育てたい」と思うかどうかだ。さまざまな研究があるが、育児支援と出生率の因果関係は明らかでない。

 では、日本の問題は何か。大手企業では手厚い育児支援策があるが機能していない。有給休暇の取得率は50%未満。制度より、意識改革が必要なのではないか。

 女性の社会進出が進んでいるが、男性が家事や育児を担う時間が非常に短い。男性の家事時間の割合は、カナダやノルウェーが四割、スウェーデンや米国が三割、イタリアが二割なのに対し、日本は12・5%。先進国で最下位となっている。

労働生産性も高く

 その分、仕事の効率が上がっているかというと、そうではない。労働生産性も、日本は先進国の中で最下位。男性の家事時間が長い国の方がむしろ、労働生産性も高い傾向が顕著に出ている。

 日本は女性が尽くしすぎるのではないか。母親一人で、家事から育児、仕事までを担うのは大変で、女性の負担を軽くしなければ、出生率は上がらない。ママではなく、パパへの育児支援が要る。男性が仕事と家庭の両立ができるようなワークライフバランスの施策が求められている。


 パク・ジョアン・スックチャ 東京都生まれの在日韓国人。シカゴ大で経営学修士号(MBA)を取得。米国系運輸企業で人事研修に携わり、2000年ワークライフコンサルタントとして独立。

(2008.1.28)


子育てのページTOPへ