中国新聞


教育現場 期待と戸惑い
学習指導要領改定案
「理数」増を評価
広島 競争激化懸念も


 「ゆとり教育」を事実上転換し、段階的な授業時間増や小学五年生からの英語必修化などが盛り込まれた学習指導要領改定案が公表された十五日、広島県内の学校現場には、学力向上への期待とともに、新たな変化に対し教える側が対応できるのかなど戸惑いの声も交錯した。

 広島市内の小学校長は「算数や理科の授業増加は評価できる」と歓迎。東広島市の女性小学教諭は「今回の改定案に盛り込まれた『生活にかかわる学力の育成』は今まさに、求められている新しい切り口」と期待する。

 一方、主要教科の授業増の代わりに削減されたのが、ゆとり教育の象徴ともいえる「総合的な学習の時間」。十年前の指導要領改定で、鳴り物入りで導入されたが「教員が事前準備にかける時間的余裕も少なく、指導法の確立に問題を残した」と東広島市の男性中学教諭は指摘する。

 特区認定を受け本年度から小学校の英語科をモデル校で始めた広島市教委。二〇一〇年度からの全市導入に向け指導計画や教材開発を進めており「改定案が目指す方向は同じ。全国のモデルになる教育を目指したい」(指導第一課)と意気込む。

 一方、広島県教組の石岡修書記長(45)は「授業時数の増加は、教員定数を増やすなど条件整備を先行させるべきだ。英語が小学校で必修化されると競争が激しくなり、結果的に英語嫌いが増える可能性がある」などと批判。道徳の教科化の見送りを一定に評価しながらも「いじめ問題などが深刻化する現状を考えたとき、個人の尊厳を柱にした人権教育こそが強化されるべきだ。従来、そこに充てていた総合的な学習の時間を削るのはおかしい」と指摘している。

(2008.2.16)


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