中国新聞


学校給食、農産物の半分を自前に 三次
地産地消 広がる土壌


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給食調理場に出す白菜を収穫する酒屋地区自治会連合会の箕田会長

 三次市で地産地消が広がっている。学校給食での三次産農産物の利用率が徐々に増え、二〇一二年度には五割を目指す。市は今春から「地産地消の店」の認定を始めるほか、生産者も積極的なPRに向け準備を進める。一方で、栄養士や住民主体で学校給食の地産地消に取り組む現場からは、市のサポートが不十分という声も上がる。地産地消をさらに進めるには、行政や生産者、住民の連携が欠かせない。

 学校給食に占める三次産農産物(野菜、果物)の品目は、14%だった〇五年度から、〇六年度には20%に増加した。市は食育推進計画の中で一二年度の利用を五割に設定。県内産で三割を目指す県の計画を上回る。

▽飲食店で認定制

 田幸や十日市の給食調理場では、栄養士や住民自治組織、生産者が連携。〇六年度でそれぞれ65%、32%と導入が進み、食べ残しが減るなど効果が上がっているという。だが、余った農産物を足らない調理場に配分するシステムや、調理場や生産者の情報交換の場がないなど体制は十分とはいえない。

 「市は掛け声を掛けるが現場任せ。支援体制をしっかりしてほしい」とある栄養士。休耕田を利用し、ほとんど無農薬の野菜を十日市の調理場などに出荷する酒屋地区自治会連合会の箕田英紀会長(66)も「子どもに安全なものを食べさせたい。でも、力を入れれば入れるほど農家や調理場との調整などが大変になる」とこぼす。

 湧田耕生教育次長は「地産地消の推進には現場のやるんだという意志が大切。調理場間や生産者間の横の連携など、現場で難しい点はサポートしていきたい」とする。

 市が昨年六月、就学前の子を持つ家庭を対象に実施したアンケート(七百六世帯)では、地産地消に関心を持つのは71%。市ふるさと農林室は今春から、市内の飲食店にも多くの三次産を利用してもらおうと「地産地消の店」を認定する。消費者ニーズに応え、生産者の所得向上や飲食店のPRにもつなげたいとする。現在、約十店舗から応募があり、一二年度には三十店舗を目指す。

 広島市でアンテナショップ「双三・三次きん菜館」やスーパーのインショップなどを展開し、産直に力を入れるJA三次の三浦功販売課長は「農家の販路拡大や三次産農産物のPRにもつながるのでは」と歓迎する。

▽「生産へ興味を」

 一方、同アンケートで、地産地消を推進するために必要だと思うことのトップは「安い価格での提供」(約58%)だった。「地産地消が所得増加に直結すると思わないが、まず身近にある農業に興味を持ってほしい。農産物が店頭に並ぶまでには人の手がかかり、農家はその収入で生きていかなければいけないことを少しずつでも分かってもらえれば」と備北地域農業青年クラブ連絡協議会の守橋邦夫副会長(38)。同協議会は今春から、自分たちで育てた農産物を使った献立を料理教室講師の協力で開発し、地元飲食店に売り込む試みを始める。

 農業への理解を深めようとする生産者の取り組みや食の安全に対する消費者意識の高まりなど、地産地消が広がる土壌は整ってきた。市には、給食担当の市教委や生産者を把握するふるさと農林室など組織間の垣根を越え、生産者や住民としっかりと連携し、有機的な取り組みを展開する姿勢が求められる。(余村泰樹)

(2008.2.25)


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