中国新聞


体育の家庭教師、福山にも登場
子の体力低下に新サービス


 福山市今津町の伊藤秀夫さん(22)が、体育の家庭教師の個人事業所「Vimsas」(ヴィムサス)を設立した。テレビゲームの台頭などで子どもの体力低下は進む。そして町の安心・安全も揺らぐ…。首都圏では増えつつある事業が地方でもスタートした背景には、外遊びもままならない現代っ子の現状を憂慮する保護者の思いもある。(山崎雄一)

 ▽走り方ユニーク指導

 放課後の市郊外の広場。「初めの一歩に体を乗せるんだよ」。伊藤さんは、小学生二人に走る姿勢や腕の振り方を説明していた。歌いながらスキップ、胸に置いた新聞紙を落とさずにダッシュ…。フォーム固めにつながるよう、ユニークな練習法を取り入れる。「楽しんで動くのが一番」と伊藤さん。一時間の授業中は笑い声が響く。

 一回ごとに受講するビジターの指導料は一人当たり一時間五千二百五十円、月会費千五十円で会員になれば一時間四千二百円。「子どもが外で安全に遊びにくくなっている」と、低学年の娘を持つ会社員の母親(40)。「それに高学年になるとテレビゲームに夢中になったりして、外で体を動かす機会が減ってしまう」と家庭教師を依頼することにした。

 文部科学省によると、二〇〇六年度の五十メートル走の十一歳の平均は一九八六年度に比べ、男女とも約〇・二秒遅くなるなど体力テストの成績は低下している。「都市化、生活スタイルの変化で外で遊ぶ意識が低くなっているのが要因では」と県教委は推測する。

 昨年まで市内のスイミングスクールの講師を務めていた伊藤さん自身、多くの子どもと接しながら、転んだ時に手が出ないなどの例を知った。東京では体育学科の大学生らが登録する家庭教師事業者もいる。「地方でも子どもの現状は変わらない。体力低下に歯止めをかける一助になれば」と伊藤さんは二月、自ら事業をスタートさせた。

 現在のスタッフは伊藤さんを含め四人。これまでに福山市や周辺の小学生を中心に個人、団体計五十組を指導。走り方や鉄棒を教えるほか、親子体操教室の講師役も務める。「安全な環境でわが子の体力づくりを」との保護者の思いは共通するという。

 「少しでも速く走りたいなど、子どもたちの目標をサポートしたい」と伊藤さん。地方では「未知の領域」と言える体育の家庭教師がどこまで広がるか―。VimsasTel084(934)5585。

(2008.5.8)


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