中国新聞


伸びる育て方
子の「?」 応えてますか
鯉城学院院長 角谷勝己


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 「ちょっと待て、塾屋は“伸ばす”のが仕事だろ」とのっけからおしかりを受けそうだが、同じように教えても、グングン伸びる子と伸び悩む子がいるのが現実だ。

 三十年近く塾講をして、伸びる子の共通点らしきものが見えてきた。皆さんはどういう子どもをイメージするだろうか。毎日勉強する、宿題を忘れない、間違えたらすぐ解き直す等々、最近わが子にしたばかりの説教や、自身の経験に照らした答えの多くはおそらく正しい。

 だが、何千人というケーススタディーを踏まえた上での伸びる子の定義とは、「分からないときにはっきりと分からないと言える子」であると思っている。

 どんなにできる子でもすべての学習内容を一度で理解できるはずはなく、常に満点を取り続けることも不可能だ。つまり、学習者は「分からない」という状況と対峙(たいじ)することを避けられないわけだ。

 そこで、分からなければ質問するというアクションが重要になるのだが、概して、かっこ悪いとか恥ずかしいという感情に対処行動が抑止されてしまうのは、大人も子どもも変わらない。

 その場しのぎで分かったフリをしたり、隣の子の答えをチラ見したり、となかなか建設的行動が起こせない。「分からないまま」でいることが普通(平気なのではない)になってしまうと、立て直しにはかなり苦労する。

 大人たちは、分からないときに分からないと言うこと、質問することがカッコいいことであると子どもたちに示す必要がある。そして、分からないという子どもの声に真摯(しんし)に応えなければいけない。「忙しいからあとで」と逃げてはいないか。「教えたじゃないかっ!」と逆ギレ気味のせりふを枕にして、トゲのある話し方で嫌々教えたことはないか。

 教える側がどれだけ一生懸命教えたかは関係ない。子どもは分からないから聞いてくる。だから、分かるようにヒントを与えてもいいし、時には分かるまで教えてもいい。伸びる子に育てること、それが子どもを伸ばすコツなのだ。

(2008.5.5)


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