中国新聞


保育園運営が深める交流
鳥取市国府町成器地区


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前田さん(右端)たちが手作りした昼食の配膳(はいぜん)をお手伝いする園児たち

 鳥取市の市街地から日本の名滝百選「雨滝」へ至る県道31号を進むと、自然あふれる山間に地元が自主運営する「いきいき成器保育園」がある。今春廃止された市立保育園を活用した木造平屋の園舎に四、五歳の計四人が通う。保育士の中川京子さん(42)ら職員は散歩などを通じ地域交流を図る。

 園児が心待ちにするのが、近くの成器地区公民館での昼食会。月二回、三人の「エプロンおばさん」が食材を持ち寄り腕を振るう。十一日は地元でとれたジャガイモのコロッケなど。リーダーの前田妙子さん(58)は「園児の笑顔が何よりの楽しみ」と目を細める。

 保育園のある中河原など成器地区では十集落に計二百世帯、七百五十人余が暮らす。少子高齢化で六十五歳以上が四割近い。

 公民館と県道を挟んで立つ旧成器小は二〇〇二年春、統廃合で閉校になった。昨年一月、市が保育園の廃園を地元に提案。保育園までもが地域から消える事態に住民らが立ち上がった。

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 運営を引き継いだのは有志でつくる保育園運営協議会。成器地区自治会長でもある山崎豪太郎協議会長(58)は「保育園を核に元気を取り戻したい」と話す。

 市の助成を受ける一方、園を支える「応援隊」もできた。生産農家によるイチゴ狩りやサツマイモ掘り、昔遊びを教えるおじいさん先生…。公民館館長を兼務する湯谷久実園長(66)は「地域のぬくもりのある保育を続けたい」と支援の輪の広がりを喜ぶ。

 旧成器小の木造校舎では、四十五年ぶりに東京からUターンした福田典高さん(68)がアトリエを開く。「自然がいっぱいの故郷を絵に残したい」。ゆったりした時間が流れる中で絵筆を動かす。(時永彰治)

(2008.9.17)


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