中国新聞


産科救急、広島県内も窮迫
妊婦受け入れ拒否
現場「人ごとでない」


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 東京都内の妊婦が都立病院などに受け入れを断られ、脳内出血を起こして死亡した問題で、慢性的な産科医不足に悩む広島県内の病院は「人ごとではない」と受け止める。高度な医療が可能な「総合周産期母子医療センター」などの医師の勤務は過酷で、専門医の確保や搬送を円滑化する対策が急務だ。(藤村潤平、田中美千子、永里真弓)

 ▽医師確保や搬送対策急務

 母体・胎児集中治療管理室がある「総合周産期母子医療センター」は、都道府県が指定する。県内は県立広島病院(広島市南区)と広島市民病院(中区)。両病院とも複数の医師が二十四時間態勢で交代勤務し、当直医一人だった都立病院より医師数は多い。

 ただ、広島市民病院の「総合センター」主任部長の林谷道子医師は「このまま医師が増えない実態が続けば、広島でもいつ同様の惨事が起こるか分からない」と危機感を示す。

 センターのベッド数は六十六床。昨年度は妊婦と新生児を合わせ計千六百五十一人を受け入れた。うち三百五十九人は三次、東広島など市外を含む他の産院から、妊婦または新生児が緊急搬送されたケースだった。受け入れられなかったケースは昨年七件。いずれもベッド数が満床だったためだ。

 診察に当たる医師は十六人。夜間は新生児担当二人、産科医一人が当直する。林谷医師は「特に新生児担当の勤務実態はきつい。経験年数が六年以下の三人を含めて六人しかいないため、宿直は三日に一度の頻度。一人でも倒れたら回らなくなる」と明かす。

 「総合」に準ずる高度医療を担う「地域周産期母子医療センター」は県内に七カ所ある。JA尾道総合病院(尾道市)の黒田義則院長も「産科医の絶対数が足りない。がけっぷちで踏みとどまっている」と訴える。

 過疎地の実情は厳しい。年間約五百人の分娩(ぶんべん)を受け持つ三次市立三次中央病院の大谷清事務部長は「断ったら患者は行くところがない。どんな状況でも受け入れざるを得ない。絶対的な使命」と強調した。

 中核病院にコーディネーターを置く制度を望む声もある。連絡窓口となって病状を的確に把握し、搬送先の病院を指示するのが役割。大阪府が昨年、千葉県が今年に設けた。

 中国労災病院(呉市)は「明確な要請があれば受け入れ準備の態勢を取りやすい」と県に設置を求めている。

(2008.10.24)


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