中国新聞


教育現場じわり再生
スクールサポーター 県警の派遣半年余


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派遣先の生徒の様子などについて県警少年対策課員(右)に報告するスクールサポーター

 教諭への暴力の増加を受け、校内で問題行動を繰り返す生徒を支援指導するため、広島県警が県内の中学校に「スクールサポーター」を派遣して半年以上が過ぎた。教諭と連携して生徒に寄り添い、学校側に対応をアドバイス。外部の視点導入が教育現場の再生につながりつつある。(野田華奈子)

■暴力を未然に抑制

 県東部のある中学校。授業中に教室を出て行く複数の生徒がいる。週一回のペースで元警察官のスクールサポーター二人が校舎内を巡回すると、階段の隅でパンをかじっていたり、携帯電話で音楽を聴いていたり。たばこの吸い殻を見つけることもある。「朝ご飯、食べたんか」。話に応じる子もいれば、「帰れ」と冷めた視線を投げる子もいる。

 ▽必ず声掛け

 対象生徒の多くは、家庭事情から定時の起床や食事などの生活習慣が身に付いていない。「話ができるようになるまで半年はかかる。一対一だと、次第に家族の話や進学の悩みなどを打ち明けてくれるようになった」。サポーターの箱田繁広さん(61)は、生徒の「ストレス発散」を受け止め、粘り強く気持ちをくむよう努める。たとえ無視されても必ず声は掛ける。派遣された昨年五月以降、最近になって生徒の動きが落ち着いてきたと実感する。  この学校では昨年、教諭に対する暴力事件も起きた。教育的な観点から「警察への通報は最終手段」(校長)と対応に悩むこともあったが、サポーターに相談でき心強いという。

 教諭たちは、本来なら授業の準備や教材研究などに充てる時間を割いて生徒に対応している。だが、「木を見ながら森も見なくてはならない。一番大事なのは授業」と校長。サポーターの支援が、授業を受ける生徒の安心感にもつながっていると評価する。

 ▽増員を検討

 県警少年対策課によると、教諭への暴力で中高生が逮捕、補導されるなどした件数は二〇〇八年で五十八件、五十九人と、過去五年で最多になった。しかし、派遣校七校での暴力事件の発生状況をみると、派遣前に比べ派遣後は抑制傾向となった。県警は暴力事件などの犯罪に発展する前段階の問題行動を指導強化した表れとみる。

 派遣を希望する学校も増加。現在の体制では限界があるため待機状態となっており、県警はサポーターの増員も検討している。

 派遣校に対する県教委指導第三課の聞き取り調査。一部の学校からは、問題行動を起こした生徒の保護者と面談の際、サポーターも同席し日ごろの生徒の様子を説明することで、第三者的な立場からの指摘に保護者の理解が深まったというメリットが挙げられた。

 指導第三課は「例えばなぜ注意するのかを含め、まず学校が指導体制を確立することが大切。サポーターに協力してもらうことで指導力向上を目指したい」としている。


クリック スクールサポーター 教諭への暴力など学校内での非行の深刻化を防ぐため、県警が2008年度から非常勤嘱託員として県警OBら4人を採用。現在は広島地区と福山地区に分かれ、2人1組で派遣希望のあった中学校計7校を回って活動している。授業の妨害や校内で喫煙する生徒に対し、教諭とともに声を掛けるなどする。

(2009.1.12)


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