中国新聞


ネットいじめ、チームで解決
県警と県教委タッグ 山口県


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サイバーパトロールをする県警少年課員と携帯電話のサイト画面

 ▽今月から本格開始

 携帯電話やインターネットを使ったいじめや犯罪から児童生徒を守ろうと、山口県警と山口県教委が連携し、事例ごとに警察官や教員らのチームをつくって解決策を探る体制を整えた。ネット問題に特化した両者の連携は全国で二例目という。

 チームは、警察への相談やネットを監視するサイバーパトロールなどで問題を把握した場合に設置。警察署の生活安全課員、市町教委の指導主事、生徒指導担当の教員ら六、七人で構成する。

 主に市町教委や学校が、保護者や関係する児童生徒らから事情を聴き、県警OBの少年安全サポーターが情報共有を橋渡し。署員がサイト管理者への書き込みの削除要請などで支援する。脅迫など犯罪の疑いが濃い場合は県警少年課員も加わり、加害者の特定や証拠保存などを進める。

 昨年十月から試験的に運用を始め、今月から本格開始した。これまで三件対応し、いずれも沈静化に向かっているという。十二月には、県東部の署に女子中学生の保護者が、携帯電話のサイトに娘の顔写真と中傷する虚偽のプロフィルが掲載されたと相談。教師が書き込んだ生徒から事情を聴き、警察はサイト管理者に要請して削除した。

 県教委学校体育・安全課は「犯罪性の高いケースへの対応、被害者や加害者の特定は学校や教育委員会だけではノウハウがなく困難。警察と連携する枠組みが明確になると、学校も動きやすい」と利点を挙げる。

 県警少年課は「ネット問題は周囲から見えにくく、エスカレートして殺人や傷害など重大事件に発展することがある。実態を把握して早め早めに対応したい」としている。(高橋清子)

 ▽専門員への相談14件

 県教委は昨年四月、インターネットの絡むいじめ対策のため、情報通信企業OBの専門相談員をやまぐち総合教育支援センター(山口市)に配置。十二月末までに、生徒指導担当の教師や保護者から十四件の相談を受けた。

 大半が携帯電話の掲示板に、児童生徒に対し「キモイ。ウザい」など悪口や中傷が書き込まれた案件だった。特定のサイトを監視するネットパトロールの依頼もあった。相談員はサイト管理者への削除依頼や書き込んだ相手を特定する方法などを助言した。

 センターは「想定より少ない」という。学校からの電話相談が多く、「まず学校に相談して対応するケースが多いのでは」とみている。今後は、PTAの勉強会への講師派遣など、啓発にも力を入れる。

 ▽誹謗中傷、県内63件 中学校目立つ

 児童生徒の間でインターネット関連のトラブルやいじめ、犯罪の疑いのあるケースが実際どのくらいあるのか、正確なデータはないのが現状だ。

 県警少年課は、ネット対応チーム設置の体制を整えたのを機に、警察署や学校、教育委員会への相談件数や内容を集約し、実態把握を始めている。

 文部科学省の児童生徒の問題行動調査によると、県内の2007年度のいじめの認知件数は1070件で、うちパソコンや携帯電話などでの誹謗(ひぼう)中傷は63件(06年度は65件)。中学校が37件と多かった。

 一方、県警はネットが絡む児童買春・ポルノ禁止法違反など「サイバー犯罪」の摘発件数、出会い系サイトで被害にあった児童生徒の数を集計。昨年1―11月の摘発件数は27件(07年は25件)で、出会い系サイトの被害は17人(07年は43人)だった。

 県警、県教委とも「これらは氷山の一角。実際の数はもっと多い」とみている。

(2009.1.18)

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