中国新聞


学力アップへIT授業
電子黒板や小型パソコン
広島県内、広がる試み


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電子黒板に児童のノートを映し出し、補足する内容を書き加える山根教諭

 情報技術(IT)が教室の授業風景を変えつつある。電子黒板や小型パソコン、テレビ会議システムなど、最新鋭の機材で学習の幅を広げる試みが始まっている。広島県内の先進校を訪ねた。(柳本真宏)

 ■教員の研修も不可欠

 カチカチ―。パソコンの操作音が響く。尾道市立土堂小の特別教室。二年二組の二十六人が、一人一台ずつ小型パソコン「タブレットPC」と向き合っていた。

 「読み・書き・計算」を反復学習する、独自の授業だ。画面に漢字の穴埋め問題が表示される。児童は専用ペンで解答を画面に書き込むと、パソコンが正誤を判定する。

 教諭は一問ずつチェックする必要がない。同小は、基礎力定着を目的に効率性を重視。IT企業と交渉し、二〇〇五年四月から三十台を借り受けている。

 ▽98%が検定合格

 効果は挙がっているという。日本漢字能力検定協会(京都市)の漢字検定を〇八年、全校生徒の約八割にあたる二百三十六人が受検。合格率は98・7%と高かった。

 全十二クラスに、従来の黒板とともに電子黒板も備えている。二年一組の算数の授業では山根僚介教諭が、50インチの大型プラズマディスプレーに、配布したプリントを映し出していた。目盛りを読んで、長さを答える問題を解説。画面上に専用ペンで解答やポイントを書き込む。

 電子黒板は、付属の投影機やパソコンに接続し、写真や画像が読み込める。児童は手元の教材と黒板の双方に、忙しく視線を移し替える必要はない。電子黒板だけに注目すれば良い。「児童の視線が黒板に集まる。理解度を高めるのに役立っているはず」と山根教諭。板書の時間も節約できるという。電子黒板の導入にあたり、PTAなどからの援助金を募った。

 県内では三次市の青河小が独自に二台購入した。同市の三和小はパナソニック教育財団(東京)による助成事業を活用し、二台を備えている。

 ▽テレビ会議活用

 一方、広島県府中町の安芸府中高は〇三年から、インターネットを活用したテレビ会議システムを活用している。国際科の生徒が年十回程度、オーストラリアやハワイの提携校と、双方向型の交流授業を展開している。

 高性能カメラで互いの教室を映し出す。スクリーン越しに環境や経済問題について討論する。担当の殿重達司教諭は「距離があるにもかかかわらず、相手の反応を見ながら議論できる。生徒には貴重な経験」と強調する。

 ただ、IT機器の導入には、教諭の運用力アップが不可欠だ。従来型の指導方法が変わることに戸惑う教諭も少なくない。IT普及を推進する文部科学省は、教員研修の必要性を指摘している。

 ハード面の課題も残る。インターネットなど本格的なIT導入の前提となるのが、公立小中高校普通教室の構内情報通信網(LAN)整備率。文科省の調べでは〇八年三月現在、福山市が99・1%、広島市が98・1%。一方、大竹市と広島県坂町は0%と地域格差が大きい。

 国は一〇年度末までにLAN整備率100%を達成する目標を掲げる。半面、財源は自治体だのみだけに、IT化のさらなる促進は容易ではなさそうだ。

(2009.1.19)


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