中国新聞


「命」重み実感 心育つ
校舎でモルモットやハムスター飼育


 ▽獣医師会指導 広島3小試み

 モルモットやハムスターを校舎内で飼育する小学校が増えている。触れ合いを通し、命の重みを実感させる効果があるという。広島県内でも広島市などの公立小三校が、県獣医師会(南区)の指導を受けながら試みている。(新田葉子)

 ▽休日も自宅で世話

 袋町小(中区)の一年生の教室では、モルモット二匹を飼育している。「かわいいでしょ」「小さいから大事にしてるんだよ」。児童は体長約二〇―二五センチの体をそっと抱き上げた。

 昨年十一月、生活科の授業の一環で飼育を始めた。始業前は児童四十二人が交代で餌や水をやり、ケージを掃除する。希望者は放課後も世話をする。週末や長期休暇中は、保護者の了解を得た児童が自宅に連れ帰る。

 担任の荒本悦子教諭は「都心の学校なので、ペットを飼えないマンションに暮らす児童が多い。命のぬくもりに触れさせたい」と説明する。獣医師の指導に従い、児童に手洗いや清掃を徹底。気がかりだった衛生面のトラブルはないという。

 荒本教諭は児童の心情の変化を感じる。モルモットを中心にクラスの団結力が強まった。世話を忘れないように、当番はバッジを着ける工夫をするなど責任感も身に付いてきたように思う。

 学校現場ではこれまでも昆虫や魚類を教室で飼ったり、ニワトリなどを校庭の飼育小屋で育てたりしていた。それを上回る教育効果が、小型の哺乳(ほにゅう)類の室内飼育にはあるという。小動物は触りやすいため、児童は体温や重みをより感じ取れるうえ、室内飼育が一層愛着を育てるからだ。

 南方小(三原市)も昨年九月、玄関ロビーでハムスター一匹を飼い始めた。平均的な寿命は二、三年と短いが、寺田宣文校長は「死を見つめさせ、命の尊厳を教える契機にしたい」と話す。府中中央小(府中町)も同十一月からモルモット八匹を飼っている。

 ▽教員対象の講座も

 「命の教育」を重んじる背景には、命を軽んずるような子どもの行動が目立ってきたことへの危機感がある。文部科学省は昨年十一月、小中高生の問題行動調査の結果を公表した。学内外での暴力行為は全国で五万二千七百五十六件と過去最多を記録。いじめは前年度より減ったが約十万一千件と依然多い。自殺者も百五十八人に上った。

 文科省は昨年三月告示の新学習指導要領に、動植物へのかかわり方について「継続的な飼育、栽培を行うようにする」と初めて明記。「生き物への親しみを持ち、生命の尊さを実感する」機会の意義を強調した。

 県獣医師会は「動物飼育は心の発達を助ける有効な手だてだ」との観点で、二〇〇五年から教育者を対象にした小動物の飼育方法の講座を開講する。昨年九月には「命の大切さ対応検討委員会」を設置。獣医師が教育現場からの相談に応じる体制づくりや感染症予防の知識の普及を急ぐ。

 検討委の中心メンバー和田安弘獣医師(東広島市)は「言葉の通じない動物の気持ちを考える過程が、思いやりの心をはぐくむ」と呼び掛けている。

(2009.3.23)


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