中国新聞


和の文化 礼儀養う
福山の鳳中 空手・尺八・茶道を指導
07年から講師招く 生徒に落ち着き


photo
空手の形を生徒に教える脇坂さん(左端)

 福山市伊勢丘の鳳(おおとり)中で、校区内の空手や茶道などの指導者を講師に招く試みが続いている。生徒に和の文化を通じて礼儀作法を身に付けさせる狙いだ。数年前まで、地域から「荒れた学校」と言われた同中だが、「今はすっかり落ち着いた」と折口浩三校長(55)は話す。どのような指導をしているのか、生徒の精神面を育てる取り組みに触れた。

 十四日、三年生を対象に本年度最初となる空手の授業があった。「武道場に入るときは、きちんとあいさつをしよう」。武道場に全日本少林寺空手道連盟の脇坂雄三さん(49)の大きな声が響く。

 授業を始める前に、生徒と脇坂さんは正座し一分ほど瞑想(めいそう)をする。姿勢を正し、互いに礼を交わす。「お願いします」。そして正拳突きや形の実技指導が始まる。

 ▽姿勢や態度重視

 脇坂さんが重視するのは、授業中の生徒の姿勢や態度。「背筋を伸ばし、胸を張って」「あくびをするな」。笑顔を浮かべながら、ときに厳しく言う。授業が進むと、生徒らの表情にも真剣さが増してくる。脇坂さんは「集中することを覚えれば、一年もしないうちに見違えるようになる」と話す。

 同中は二〇〇七年から脇坂さんたちのような指導者を学校へ招く取り組みを始めた。「日本古来の文化を通じて、生徒に礼儀作法を身に付けてもらいたい」との折口校長の呼び掛けに応じ、空手、尺八、茶道、水墨画の講師がボランティアで授業を始めた。

 三年目を迎える本年度も水墨画を除く三分野を継続する。学期ごとに学年を替え、空手や尺八は週二回、茶道は週一回、体育や音楽の授業の一環として実施する予定だ。

 茶道を教える表千家同門会備後支部の陶山恒夫事務長(60)は「最初は落ち着きがなさそうだった子が見違えるようになる。生徒の内面的な成長を手に取るように感じる」と、やりがいを語る。

 ▽地域とつながり

 取り組みを始めてから、たばこの吸いがらなどが散乱していた校内からは、ごみ自体がほとんどなくなった。登下校時にあいさつをする生徒が増え、授業中に学校を抜け出し、コンビニで生徒がたむろすることもない。田中康好PTA会長(55)は「だらしない服装の生徒も減った。取り組みの成果は着実に出ている」と喜ぶ。

 今後、同中はさらに地域から和の文化の指導者を募り、学校と地域のつながりを強めていくという。折口校長は「自主性や創意工夫が強調される現代だからこそ、その土台として日本古来の文化から礼儀作法を学ぶことが大切だ。もっと取り組みを広げていきたい」と強調している。(山本堅太郎)

(2009.4.20)


子育てのページTOPへ