中国新聞


未来の先生 教室に新風
広島市教委 小中高・幼稚園へ学生派遣


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跳び箱の授業で児童に助言する樋口さん(手前左)

 広島市教委が教員志望の大学生を小中高校や幼稚園に派遣し、授業や部活を支援する独自の事業を展開している。若者の登用で学校現場を活気づけるとともに、未来の教員の指導力アップを図る。

 ▽授業や部活 実地で研修

 「手をしっかり前について」。安小(安佐南区)の体育館。4年生の体育の授業で、広島修道大3年樋口元紀さん(20)=同区=が跳び箱の指導を手伝っていた。「危険な跳び方の子どもがいないか」と注意も払う。

 ▽魅力を再確認

 樋口さんは毎週金曜日、市教委の派遣で同校に通い、担任教諭の指導を補助する。算数では、計算に苦戦する児童にヒントを与える。休み時間は児童からお絵描きやドッジボールをせがまれ、まさに引っ張りだこだ。吉田浩一教頭(47)は「年が近く、児童に懐かれている。新しい風が入り、学校全体も活気づいた」と喜ぶ。

 樋口さんも「問い掛けや板書の方法など、学ぶことが多い。何より、児童と交流できるのがいい」とやりがいを感じる。教員は中学時代からの夢だが、最近は少年事件が取りざたされる事が多く、将来に不安を覚えていた。「現場に来てみると、どの子も元気。自分の子ども時代と同じだと、再確認できた」

 ▽提携校が倍増

 市教委は2006年春、市内の6大学と提携し、この制度を導入した。学生を受け入れる学校・幼稚園はまず、学習支援や部活指導、教材作りなど、支援してほしい内容を市教委に伝える。その情報を市教委がホームページに掲載。学生の応募があれば、学校・幼稚園が面接する。

 市立校と幼稚園の教員の平均年齢は45・1歳。少子化に伴い、教諭採用を抑制してきた結果、高齢化が進んだ。市教委指導第1課は「子どもからみれば、親より上の世代の教員が多い。学生の登用により、幅広い年齢層のさまざまな考え方に触れさせられる」と目的を説明する。さらに団塊世代の大量退職の時期も始まっており「学生を即戦力になるよう磨きたいとの思いもある」という。

 学生側のメリットも大きい。受け入れ先の担当教員から実地で指導法の助言を受けられる。広島修道大(安佐南区)などは、制度参加が単位に認定される。希望者が増え、提携校は当初の2倍にあたる県内12校に拡大。昨年度は計114人の学生を派遣した。

 ▽負担増を憂慮

 一方、学生を受け入れると現場の負担が増す悩みも。ある学校の担当者は「学生の意欲や能力は個人差がある。子どもに接する以上、一定レベルに達してもらわないといけないが、多忙な現場に手厚い指導ができる余裕もない」と漏らす。

 市教委は年1、2回、提携大学と受け入れ校・園の代表者を集め、こうした課題や現状を協議。同指導第1課は「派遣先に過度の負荷がかからない制度にしていきたい」としている。(田中美千子)


広島市教委の提携した大学 エリザベト音楽大▽県立広島大▽比治山大・短大部▽広島経済大▽広島国際学院大▽広島国際大▽広島修道大▽広島女学院大▽広島市立大▽広島大▽広島文教女子大▽安田女子大・短大

(2009.7.13)

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