中国新聞


プロ招き エコ学ぼう
広島市教委、連携の10企業・団体から派遣


 広島市教委が環境教育に力を入れている。本年度は、10企業・団体の環境系の技術者や専門家を小中学校に派遣し、各校から申し込みが相次いでいる。節電やごみ削減などの実践も推進している。(田中美千子)

◇   ◇

 竹屋小(中区)の3年生の授業に9月、財団法人広島県環境保健協会(中区)の環境コンサルティング担当平岡喜代典さん(56)が派遣された。

 平岡さんは「ホタルの一生」について講演。ゲンジボタルの幼虫は水中で育った後、地中に潜る。土で固めて作った「土繭」の中で、さなぎに変身。成虫は暗がりの草むらに集い、雄は光を点滅させて「プロポーズ」する―という成長過程を教えた。

 「じゃあ、ホタルが昔より減ったのはなぜかな?」と平岡さん。児童は「川の汚染が進んだから」「店が増えて、暗がりが減った」と、次々に気付きを発表した。

 ▽指導に苦心も

 「水中も水際も川の周辺も…。多様な環境の保全が必要なことを伝えたかった」。平岡さんは、授業の狙いをそう説明する。「ホタルは成長段階に応じ、生息場所が違う。格好の教材なんです」。授業に参加した平田健三校長は「身近な素材から環境への思考を引き出していた。教員の勉強にもなる」と喜んでいた。

 環境教育の充実は学習指導要領に盛り込まれ、国は指導の意義や事例を示した教員用の資料を発行している。ただ、教材や時間数に決まりはなく、取り組みは各校に委ねられ、指導案づくりに苦心する学校もある。

 ▽「将来に投資」

 市教委は企業・団体の専門性に期待して、同協会など県内外の9社1団体に協力を仰いだ。企業団体はそれぞれ、資源リサイクル、二酸化炭素の排出量を抑えたエネルギー開発など、独自の授業メニューを用意する。本年度は小中計204校のうち58校から、計85回の派遣依頼があった。

 企業・団体側もPR効果を見込む。使用済みトレーのリサイクル事業を展開するエフピコ(福山市)の環境対策室は「トレーの回収量を上げるには市民の協力が必要。市外ではあるが、将来への投資ととらえている」という。市教委はさらに協力企業・団体を増やしていく考えだ。

 ▽夏休みに実践

 講師派遣と並行し、日常的な省エネ活動の定着も図る。学校での牛乳パックのリサイクル、給食の食べ残しの削減などの取り組みを提唱。夏休み中、節電や節水の達成度を記録させる「こどもエコチャレンジ」の導入も呼び掛け、今夏は大半の小学校が参加した。

 市教委指導第1課は「知識を得るだけでなく、学校や家庭で行動に移す力を身に付けさせたい」としている。

(2009.10.5)

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