中国新聞


将来設計科を一貫指導 廿日市の宮島小・中
夢を育てる 島を知る


 廿日市市宮島町の一貫校、宮島小・中が、職業観を養う独自教科「将来設計科」に取り組んでいる。小・中の9年間、近くの幼稚園とも連携し、観光の島の産業を題材に、子どもたちが自分の将来を見詰め、夢の実現に向けて考える力をはぐくむ。島に愛着を持つきっかけにもつなげる。(鈴中直美)

◇   ◇

 「いらっしゃい、いらっしゃい」。今月中旬、小学1年の教室に「もみじしょうてんがい」が開店した。あなごめし、揚げもみじ、焼きグリ、にぎり天、しゃくしはがき…。観光客でにぎわう表参道商店街などで、子どもたちが目にする身近な店が並んだ。宮島幼稚園の園児も、店員や客になって参加した。

 ▽年17〜60時間

 同校は一貫校となった2008年度、文部科学省の研究開発指定を受けて「将来設計科」を新設した。授業は学年によって年間17〜60時間。小学低学年から中学1年の初めごろまでは、主に身近な家族や島で働く人たちがそれぞれ担う役割を学ぶ。小学高学年からは、徐々に視野を社会全体に広げてさまざまな職業を学び、夢の実現に向けた見通しを立てる能力を身に付ける。

 将来、多くが宮島小に進学する宮島幼稚園に呼び掛け、園児の授業参加も積極的に受け入れている。木本弘士校長は「キャリア教育は中学から―と限定しがち。しかし、小さな子どもが夢を持つことが出発点になる。幼小中が連携して12年間の長期的な取り組みにしたい」と強調する。

 模擬店に取り組んだ小学1年生の8人は、10月上旬の授業で島内の商店街を探検。商品の種類や客への声の掛け方などを調べて歩き、実践に生かした。

 模擬店でにぎり天を販売していた三登誠君(7)は、油に見立てた鍋の中に折り紙製の天ぷらを入れて必ず20秒数える。「お店の人がやってるのを見て、まねをした。大きくなったら、にぎり天屋さんになりたい」と張り切っていた。

 子どもたちも地域で観察した仕事をまねて、網の上で焼いているアナゴをうまくひっくり返す技や、タレをはけで塗る手つきなどを試す。

 ▽英語で案内も

 同校は、「地域伝統科」「国際コミュニケーション科」という二つの独自教科も設けており、「将来設計科」と連動させる。商店街での仕事調べや職場体験に加え、島の歴史や文化、特産品について学び、英語での接客、案内にも力を入れる。

 中学2年では、外国人客も多いもみじまんじゅう店や宿泊施設で5日間の職場体験を実施する。事前に英語での接客を練習し、8月には13人が13店舗に分かれ、もみじまんじゅうの製造や箱詰め、包装、ホテルのフロント業務などを体験した。

 生徒を受け入れたもみじまんじゅう店経営者博多裕さん(66)は「地元の子が島の仕事に愛着をもつきっかけになると思う。宮島で働きたいと思えるように私たちも頑張らなければ」と話す。

 島に高校はなく、中学を卒業すると島外の学校に通う。子どもたちの目も島の外へ向きがちになる。木本校長は「島で働く人の苦労や工夫を知ることが、地域に対する誇りや愛着を抱く機会となるはず。島の将来を考えるきっかけにしてほしい」と期待している。

(2009.11.30)


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