中国新聞


学校での死因 半数突然死
現場の救急体制 広島でシンポ


photo
学校現場の救急体制について話し合った全国学校保健・学校医大会のシンポジウム

 学校現場の救急体制をテーマにしたシンポジウムが、広島市中区での全国学校保健・学校医大会であった。学校での死因の半数を突然死が占めており、リスクのある子どもへの予防的対策の必要性などが指摘された。(平井敦子)

 ▽リスクある子 どう予防

 広島大大学院の谷川攻一教授(救急医学)が、2007年度の全国の学校での死亡事例75例のうち41例が、心疾患など病気による突然死だった―とのデータを報告した。

 さらに、広島市消防局の山下聡・救急担当部長は昨年1年間の市消防局管内の学校への出動事例を説明。搬送した518人のうち、外傷が301人、病気など内因性疾患が217人だったと発表した。内因性疾患では、熱性けいれんやてんかん、過呼吸症候群、食物や薬物によるアレルギー反応「アナフィラキシーショック」などがあったという。

 谷川教授はこうした実情を踏まえ「学校は検診などを通じて、心臓疾患や中枢神経系疾患を持つ子どもの把握が必要」と指摘。「リスクのある子どもへの予防的な対策や、急変時の対応を想定しておくべきだ」と訴えた。

 広島県医師会学校医部会は、県内の学校と結んで健康指導を行う学校医535人に対して行ったアンケート結果も公表した。

 突然死の可能性のある児童生徒の情報について、学校に常駐しない学校医が「学校から毎年得ている」との回答は16%にとどまり、「要請すると送ってくれる」が15%、「連絡もないし要請したこともない」が64%。連携が不十分な実態が浮き彫りになった。

 また、心肺停止などに陥った児童生徒の救急蘇生(そせい)について「自信がある」と回答した学校医はわずか15%。「いざとなればできるがやりたくはない」が42%▽「研修会を受けたことはあるが自信はない」が21%▽「できればやりたくない」が13%▽「できない」は8%―と消極的な回答が目立った。

 調査を担当した同部会の渡辺弘司委員(呉市)は「学校医は学校と連携を深め、ハイリスクの子どもへの対応を強化すべきだ」と強調。「学校医は学校での救急事案に直接対応する義務はないが、適切な指導をする立場にはある。救急蘇生の基礎的な知識と技術も備えておくべきだ」と訴えている。

(2009.12.2)


子育てのページTOPへ