中国新聞


情報読み解く力 子どもに
「メディアリテラシー」広島で講座


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番組の中で注目した点を書き込んだ付せんを模造紙に張る参加者(20日、広島市中区の市まちづくり市民交流プラザ)

 情報を読み解く能力「メディアリテラシー」に注目が集まり、自主企画の講座も盛んになっている。情報に流されるだけではなく、主体的に扱う力を身に付け、理解力を高めるのが狙い。広島市中区のNPO法人「子どもコミュニティネットひろしま」が開催する講座を訪ねてみた。

 今月中旬の休日にあった講座には、中高生や保護者ら約20人が参加した。3班に分かれて30分間のドキュメンタリー番組を視聴。「人の動き」「物や場所のようす」「登場人物やナレーターの声」に役割分担し、それぞれが気付いたことを付せんに書き留めた。視聴後、記憶に残った場面から順に、付せんを模造紙に張った。音声と映像がどのように組み合わされているかを分析する作業だ。

 高齢化が進む団地の屋上花壇をめぐる人間模様を描いた番組。「回想シーンの後は必ず、現在の花壇の場面に戻っている」「映像が印象的でも、BGMは覚えていない」…。参加者同士で感想を話し合う中で、中学2年新宅和憲君(14)は「真剣に見ているつもりでも自分の役割以外の部分はあまり記憶に残らなかった」と振り返った。

 「テレビ番組の情報量の膨大さに気付くきっかけに」と企画された講座。講師で東海大の水島久光教授(メディア論)は、テレビとの接し方に触れ「『1人に1台』と言われ始めた1980年代以降に育った世代と、それ以前とでは大幅に異なる」と語った。

 「1家に1台」だった70年代までは、番組内容が家族や学級内の話題に上った。テレビからあふれる情報を大勢で語るうちに、無意識にさばき、一緒にテレビの見方を身に付けていた時代という。

 一方、今のテレビの見方は、人それぞれ。視聴の場に他人がおらず、偏った見方や理解力不足に気付かない。それが、たとえ良質な番組であっても「つまらない」と敬遠する「テレビ離れ」の一因と、水島教授はみる。

 「テレビ番組は、見る人のイメージを投影して完成品になる『半製品』。理解力が伴わないと、制作者の意図は伝わらない」と水島教授。「集団で番組を試聴して意見を出し合う作業を通じて、情報を読み取り、理解する力が育つ」と強調する。

 テレビにインターネット、ゲーム…。子どもが接する情報は多様だ。子どもコミュニティネットひろしまの毛利葉事務局長は「携帯電話やテレビ視聴を禁じる動きもあるが、上手な接し方を身に付ける方がメリットは大きい」と語る。成長すると、これらの情報と無縁に生活することはできないからだ。

 子どもコミュニティネットひろしまの前身は「おやこ劇場ひろしま」。子どもが芸術文化に触れる機会をつくる活動を長年続けてきた。NPO法人化以後、情報を読み解き、選び取る力を育てようと講座を始めて3年目。年5回前後開講し、民放局と連携した番組制作や、粘土を使ったアニメ作りも行ってきた。「情報発信と受信の双方の立場を体験することで、子どもたちに確かな『見る目』を育てたい」としている。 (石川昌義)

(2009.12.29)


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