中国新聞


はし使い 目指すぞ達人
竹原の吉名小、食育推進へマナー検定


 竹原市吉名町の吉名小が、はしの持ち方や給食マナーの達成具合を進級方式で測るユニークな取り組みを進めている。児童も熱心にでき、友人同士で競い合いながら自然と身につく。達成カードを持ち帰って情報を共有し、家庭を巻き込んだ実践へと輪を広げている。

 「よーい、始め」。ストップウオッチを手に教諭が合図すると、はしを持った5年生が大きさ1センチの豆を別の皿に移し替えていく。10秒で五つの早業。成功したら級友から歓声が上がる。駄目でもほかの子が挑む待ち時間に練習し、時間内で再チャレンジする。この日、成功した平原真生(まさき)君(11)は「うまくできるように、友達と練習したかいがあった」と喜ぶ。

 昨年6月にスタートした「おはしのマナー検定」だ。はしを正しく持つ5級から始まり、10秒で豆三つを皿に移す2級、五つを移す1級とだんだん難しくなる。全校児童126人が、毎月19日に定めた食育の日などにチャレンジしている。中、高学年を中心に7割の児童が1級をクリア。学校は「はしの使い方が格段に良くなり、競い合ううちに集中力もアップしてきた」と成果を認める。

 文部科学省による本年度の食育推進事業で、市内の実践中心校に選ばれた一環で取り組む。はし使いが気になっていた上野恵美子校長(52)が提案。食育コーディネーターとして担当教諭を置いた。食生活についての児童・保護者アンケートから、食事マナーや家庭での実践などを重点課題に定めた。

 毎月第一週を「食事のマナー週間」に制定。曜日ごとに「食器を正しく置く」「心を込めてあいさつする」などの目標を立て、達成度をチェックする。

 定着を学校だけに終わらせない工夫も凝らす。マナーカードを家庭に持ち帰り、保護者に家庭での様子や励ましの言葉を書いてもらっている。

 はしの持ち方については、保護者から「家庭でのしつけの範囲内では」との声も上がった。しかし、子どもが家庭で正しい持ち方を実演。食事をつくってもらえる感謝を口にするようになり、若い母親世代を中心に共感が得られたという。

 上野校長は「集団生活で正しい見本を学べる学校の利点を生かし、家庭とも一体になって相乗効果を図りたい」と狙いを明かす。食育に関しては、地元の吉名保育所、吉名中とも連携。発達段階に合わせ、10年以上の長い期間で取り組む土壌ができつつある。

 おはし検定には、1級より上の最高峰が二つ用意されている。給食できちんと実践できる「名人」と、家庭でも毎日続けることができる「達人」。食べることを通じて成長をはぐくむ確かな一歩となってきている。(白石誠)

(2010.1.18)


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