中国新聞


萩市むつみの児童クラブ 女性ボランティアら結束
放課後支える地域力
年300日 絵画や野外体験も


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 西中国山地に抱かれた萩市吉部上地区に、子育てを終えた女性ボランティアたちが中心になってケアに当たる児童クラブがある。むつみ小の「むつみ放課後子ども教室」。合併前の旧むつみ村の「子どもサロン」を市が継続させ、屋外活動なども含めると、年間の稼働は約300日近い。「地域の子どもは地域で育てよう」。そんな思いが支える取り組みを見た。

 午後3時すぎ。チリンチリンとクマよけの鈴を鳴らし、児童がむつみ生涯学習資料館に集まってきた。旧村役場別館を活用した資料館は木造2階建て。多い日は全児童72人の半数近くが訪れる。

 宿題をしたり、本を読んだり。女性ボランティアが見守る中、保護者が迎えに来るまで過ごす。「ここが分からんと言ったら、おばちゃんが教えてくれる。けど、友達とけんかしたら怒られる」。漢字の書き取りを始めた4年小川鷹祐君(10)が笑顔を見せた。

 兄弟で絵を描いていた3年小野博幸君(9)と2年智幸君(8)。色鉛筆を出しっぱなしにしていると、ボランティアの須山ひとみさん(52)が「きちんと片づけなさい」とすかさず注意した。 週1〜4回担当

 現在のボランティアは12人。全員が40〜60代の女性で、交代で週1〜4回担当している。3年前から携わる中原誠子さん(61)は「地域のうるさいおばちゃんが相談に乗ったりマナーを教えたりする場。子どもに触れ、自分自身も若返る」とほほ笑む。

 放課後子ども教室は、保護者にも頼りの存在だ。午後5時すぎ、1年太希君(7)を迎えに来た母親の農業法人パート松中愛さん(35)は「ここはいつでも誰でも使える。急な用事ができたときなど本当に助かる」と感謝する。

 「約4キロの道のりを1人で歩いて帰らすのは不安」と言う造園業木谷与一郎さん(41)は、ほかの子どもたちが帰るまで5年百恵さん(11)を遊ばせていた。「昔と違って子どもの数が少ないから、毎日のこういう時間も大切だ。友達の顔や名前も覚えられる」

 堀田幸子さん(51)は、子どもサロン開設のころからボランティアとしてかかわる。「子どもの体調など全員で情報共有し保護者に連絡する。ここは、子どもだけでなく大人の寄り合い所でもある」と話す。

 教室の事務局で、年間活動を企画するのは、市むつみ総合事務所吉部公民館。活動は放課後の居場所づくりにとどまらない。 「社会性磨く場」

 月に1回は絵画などの体験教室を開くほか、年に5回は「むつみっ子体験隊」として、地域内外で自然、科学、料理体験も実施する。「むつみっ子まつり」、カヌー教室、お年寄りとグラウンドゴルフ大会…。今年も盛りだくさんの活動が待っている。

 むつみ小の河村時也教頭は「地元の人たちとの触れ合いで、児童は社会性を身に付けることができる」と地域の教育力を高く評価する。

 「もともと結束力の強い地域だから地元の協力が得られる」と吉部公民館の品川孝司副館長。「父親や定年退職した男性がもう少しかかわってくれると、より充実するのですが」と今後の課題を挙げた。(瀬山茂昭)


クリック むつみ放課後子ども教室 2002年度からの学校週5日制や共働き家庭が多いことへの対策として、旧むつみ村が同年8月、「子どもサロン」として始めた。05年3月の萩市との合併後も継続。07年度からの文部科学省事業「放課後子ども教室」に合わせ、名称変更した。月−金曜日の放課後に加え、土曜日と夏休みなどにも開き、08年度の実績は年間稼働293日、利用児童は延べ3353人に上る。盛んな活動を評価され、文科省から昨年11月に表彰された。市は本年度、約190万円を予算化している。

(2010.1.25)


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