中国新聞


子連れ出勤 会社の文化
広島でフォーラム 「モーハウス」代表・光畑さんに聞く


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モーハウス青山ショップ(東京都渋谷区)で、子どもを抱いて接客にあたるスタッフ(右)

 全国の企業に先駆けて「子連れ出勤」を定着させた、茨城県つくば市の授乳服メーカー「モーハウス」代表の光畑由佳さん(45)=倉敷市出身。広島市中区であった「全国男女共同参画フォーラムin広島」で試みについて報告した。光畑さんにメリットや課題を聞いた。(平井敦子)

 ―子連れ出勤を始めたきっかけは何ですか。

 モーハウスは、子育て中の女性たちと立ち上げました。授乳期の彼女たちに、赤ちゃんと一緒に働いてもらおう、と考えたのは自然な流れでした。

 育児をしていても、楽しく自由に仕事ができる環境をつくりたい。それだけで、特別なことをしている感覚はありませんでした。6、7年前からメディアに取り上げられ、子連れ出勤という働き方そのものを提案し続ける重要性に気付かされました。

 ―職場に子どもがいると、仕事の妨げになりませんか。

 いたずらをすれば、母親だけでなく、周りの社員もたしなめます。逆に、過剰にかまうわけでもありません。意外に、子どもたちは静かな時も多く、取引先やお客さまから苦情を言われたことはほとんどありません。

 子どもが病気になると、母親は会社を休まなくてはなりません。その場合は、チームでカバーしますし、家でできる仕事はやってもらいます。

 スタッフも、会社に子どもがいるという前提で働いており、理解があります。それが、私たちの会社の文化なのです。

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「子連れ出勤を実現するには、ゼロか百かの働き方をやめるのがポイント」と語る光畑さん

 ―苦労した点は。

 つくば市の百貨店にモーハウスの売り場があり、子連れスタッフが働いていますが、周りの理解を得るまでに時間がかかりました。当初は「子連れなんて、プロ意識がない」との声もありました。

 始めてみると、トラブルもなく、うまくいっています。ただ、子連れで働くというモデルがないため、周囲の事前の不安が大きく、壁になっています。

 ―子連れ出勤は広がるのでしょうか。

 今は、意識の高い企業の経営者から時々問い合わせがある程度です。でもニーズがあれば広がるはずです。

 モーハウスでは、社会に発信し続けるため、常に子連れのスタッフを確保しています。同伴する子どもは1歳ぐらいまでが多く、子どもの動きが活発になると、保育園などに預ける母親が多くなります。彼女たちが次のステージに進むため、社員は入れ替わりますから、雇用の効率は悪いですね。

 一般の会社ではそんな必要はありません。雇用していた女性社員が出産後、一定期間は子連れで短時間勤務し、その後は保育園に預けて働く。そうなると、スキルを身に付けた人材を活用し続けられて効率的です。

 会社側も働く側も「仕事と子どもは切り離さないといけない」という先入観や偏見を捨てれば、母親はキャリアを継続でき、会社は人材を確保できます。互いが「楽になる」働き方を模索するべきです。


モーハウスの取り組み モーハウスは1997年につくば市で創業。以来、子連れ出勤の社員を登用している。これまで約160人の母親が子どもと一緒に仕事をしてきた。  現在はスタッフ45人のうち8人が、生後2カ月から2歳までの子どもを連れて出勤。勤務日数も週3〜1日とさまざま。子どもを抱っこしたりしながら、授乳服の受注のメール管理や資料の発送、ショップでの接客業務などに取り組んでいる。

(2010.2.23)


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