中国新聞


新1年生の学校生活スムーズに
「幼保小」連携進む
広島市教委、全140校区で実施


 就学直後の児童が授業や集団生活になじめず、落ち着きのない状態になる「小1プロブレム(問題)」の解消に向け、広島市の幼稚園、保育園、小学校が連携を強化している。園児が学校生活に移行しやすくなるほか、児童に責任感が芽生え、教職員の指導力向上も図られるなど、メリットは大きい。

 2月下旬、広島市安佐南区の川内小を、近隣の幼稚園3園、保育園2園の計約190人が訪れた。全員が春に進学する年長児。算数や国語、道徳などの授業を受ける1年生計6クラスを巡った。

 児童と担任教諭とのやりとりをじっと見守ったり、児童のノートをのぞき込んだり。川内菜の花幼稚園の波多野亘ちゃん(6)は「お兄ちゃんたちが格好良く見えた。僕も、勉強やサッカーを頑張る」と期待を膨らませていた。

 ▽「戸惑いを軽減」

 幼保小連携事業の一環で企画した。南健一校長は「遊び中心の学びから教科学習へ、子どもの生活は一変する。事前に様子を見せ、戸惑いを軽減したい」と説明する。

 2月上旬には、逆に5年生が各園を訪ね、年長児と触れ合った。南校長は「児童が得るものも大きい。上級生としての責任感や思いやりを身に付けている」と気付きを語る。

 市教委は、2005年度にモデル地区で幼保小連携事業を始め、08年度から全140小学校区に広げた。校区ごとに校長、園長、教職員による委員会を置き、年間を通じた交流を進めている。

 特に、本年度は教職員連携を強化し、授業や保育の様子の視察や合同研修会を計画する。市教委指導第1課の中谷智子指導主事は「就学前の園児が、どんな力を付けているのか。就学後は、どんな力が求められるか。しっかり把握することが、適切な指導につながる」と強調する。

 ▽自制心が希薄化

 一連の試みを加速させた小1問題は、全国的な課題だ。授業中、児童が勝手に教室を歩き回ったり、教諭の話を聞かなかったりし、集団生活が成立しない状態が続くことを指す。08年度、学習指導要領改定を検討した中教審も、子どもの自制心や規範意識の希薄化が招いた事象として、問題視している。

 東京都は昨秋、独自の実態調査の結果を公表した。公立小全1313校の校長と教諭1人にそれぞれ、08年度の所属校で小1問題があったか、どうかを質問。校長の24%、教諭の19%が「経験した」と答えたという。

 都は事態を重くみて、小学1、2年生と中学1年生での教員の増員を決定。必要経費として、10年度予算に約7億円を計上する。

 独自施策は中国地方でも広がる。ユニークなのは04年度、小学校教諭を1年間、幼稚園に派遣する制度を設けた山口県。毎年、3〜6人が選ばれている。幼児期の育ちを踏まえ、低学年の指導のあり方を改善できる人材を育てるのが目的だ。

 文科省は、本年度から適用する新・幼稚園教育要領に「幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続」を盛り込み、連携の重要性をうたっている。(田中美千子)

(2010.3.8)


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