中国新聞


県立広島中・高 特色じわり
中高一貫 今春の国公立大合格率60.7%
開校から6年 勉強合宿や地元交流も


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合宿中、夜の教室で教員の解説に聞き入る生徒

 広島県立広島中・高(東広島市)は3月、2004年の開校時に中学へ入り、高校を通して6年間学んだ卒業生を送り出した。学校が「難関校」に位置付ける東京大や京都大、国立大医学部などに43人が合格。私立の進学校並みの合格目標を掲げるとともに、伝統芸能に触れたり、論理的思考を磨いたりする独自教育も進めてきた。

 3月下旬、春休み中の教室に集まったのはジャージー姿の高校2年生約30人。「ここに補助線を引きます」。教員が解説する東京大の物理攻略法に聞き入った。学校の寮を使った希望者向けの2泊3日の合宿。1年後に挑む難関大の入試問題を解く。

 広島大医学部志望の横畑宏樹さん(17)は「自分の力と志望校との距離がわかり、残り1年の課題が見えた」と手応えを話す。

 学校は、高校2年の3学期を「高校3年の0学期」と位置づけ、生徒に意識改革を求める。教員と生徒の進路相談会を年間約30回開き、志望校の選択や具体的な学習方法を話し合う。

 卒業生もサポートに加わる。広島大医学部2年の唐口望実さん(19)は進路説明会で「持ち味のフレッシュさを生かし、他校に対抗しよう」と励ました。

 ▽「70%」は未達成

 広島県立校では初めての併設型中高一貫校。私立より学費が安く、中高一貫教育なので高校受験もない。とりわけ注目されたのが「国公立大への合格率70%」の目標。初年度の中学入試(定員160人)は、倍率11・7倍の人気を集めた。

 6年間の結果が問われるのが今春の進学実績だった。卒業生234人のうち、国公立大合格は142人で60・7%。「難関校」は10校に43人が合格した。内訳は大阪大15人、京大6人、東大3人―などだった。

 開校時に高校へ入学した生徒が卒業した2007年、国公立大合格率は69・5%。その後下降傾向が続いている。「70%ライン」は一度も果たせていないが、榊原恒雄校長は「国公立大の中でも生徒の志望校にチャレンジさせている」と説明する。

 ▽伝える力を強化

 受験以外でも、中高一貫校の特長を発揮している。生徒たちは、落語や三味線などの伝統芸能を体験し、論理的思考や表現力を磨く授業科目「ことば科」も受ける。弁論大会もあり、伝える力を強化している。

 寮で生活する生徒を中心に、地元とのつながりも模索する。広島大の学生を寮で勉強などを教える補助スタッフに採用。生徒は定期的に学校周辺の清掃活動もしている。箏曲部が老人会で出張演奏をしたり、天体観測会を開いて学校に招いたりするなど新たな交流も増えてきた。

 高校3年の河野華奈さん(17)は「通学途中に会う人にはあいさつをするように心掛けている」と話す。約半数は市内から通学する生徒で、地域にとけ込みつつある。

 「歴史が浅いため、生徒には皆に学校の伝統づくりの担い手だという自負がある」と榊原校長。生徒の自主的な活動に今後の成長の鍵が隠されている。(新谷枝里子)

(2010.4.5)

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