中国新聞


安全なお産 地域で守る
診療所で健診 病院は分娩 セミオープンシステム


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呉市では市医師会発行のノートが病院と診療所、妊婦を結ぶ(呉医療センター)

 ▽中国地方でも導入進む

 妊婦健診は診療所で、分娩(ぶんべん)は病院で―と、医療機関が連携してお産をサポートする「セミオープンシステム」。中国地方でも導入する医療機関が増えている。医師不足が続く中、病院の産科医の外来負担を軽減し、安全なお産を地域全体で守ろうとの取り組みだ。

 セミオープンシステムは、妊娠中期までの妊婦健診は最寄りの診療所が担い、出産が近づいた段階の健診や分娩を病院が受け持つ仕組み。診療所の医師が病院に出向き、分娩まで立ち会うオープンシステムとともに導入が進んでいる。

 産科医不足で、分娩を扱う病院や産科の閉鎖が進む中、病院に負担が集中するのを緩和するため、厚生労働省も後押ししてきた。中国地方では、県立広島病院(広島市南区)など7病院がセミオープンを、鳥取県立厚生病院(倉吉市)など2病院がオープンを導入する。

 ▽医師負担減る

 2008年以降、セミオープンを取り入れた国立病院機構呉医療センター(呉市)と中国労災病院(同)。市内の8カ所の診療所と連携する。平均14回の妊婦健診のうち10回を診療所が担当。病院が受け持つ健診は4回程度に減ったという。

 呉医療センターで昨年、7人の医師が扱った分娩は925件。分娩以外にも、婦人科のがんの手術や抗がん剤治療、外来、当直勤務をこなす。「導入によって医師の負担が確実に減り、妊婦の安全にもつながっている」と水之江知哉産婦人科長(51)は強調する。

 同センターと診療所は情報を共有するため、市医師会が作成した独自のノートに検査結果などを記入し、連携に力を入れている。受診した市内の女性(36)は「診療所での健診では、ノートに詳しい検査結果や注意点を書いてもらったし、出産は病院なので安心感もある」と理解を示す。

▽周知を目指す

 国立病院機構浜田医療センター(浜田市)と済生会江津総合病院(江津市)も浜田市内2カ所の診療所と07年から連携する。

 浜田医療センターは昨年、3人の医師が約440件の分娩を扱った。「対応できる限界に近い」と小林正幸周産期診療部長(52)。今年に入り、1日に6、7人の出産があった日もあった。「システム導入以降、外来診療が1時間半は短縮でき、肉体疲労の軽減になった」と評価する。

 ただ、同市が昨年10月から3カ月間、出産後の母親たち95人にアンケートした結果、システムを利用しなかった人が36人(37・9%)いて、利用が一部にとどまる実態も浮き彫りになった。「システムを知らなかった」との回答も多かったため、市は、市内の薬局にポスターを張るなどし、周知を図る。

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「健診を最寄りの診療所で受けてもらえるよう、理解を得ていきたい」と話す小林部長(浜田医療センター)

 浜田医療センターの小林部長は「妊娠した段階で『まず診療所へ』と思ってもらえるように、機会あるごとに説明していきたい」と話している。(治徳貴子)

(2010.4.21)


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