中国新聞


全国学力テスト 福山市、自主参加を見送り
各校採点 比較の精度保てず
抽出方式・既存の調査活用


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「参加校の独自採点では公表に足るものにならない」と自主参加見送りの理由を話す高橋教育長

市教委の高橋教育長に聞く

 4月20日にあった文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)に、福山市は県内で唯一、自主参加を見送った。他市町と足並みをそろえなくても子どもへの影響はないのか。市教委の高橋和男教育長(64)に不参加の理由と学力向上策などを聞いた。(武内宏介)

 ―なぜ、自主参加を見送ったのですか。

 参加校が独自に採点しなければならない。過去のテストで試しに独自採点する学校があったが、文科省の結果と大きく違った。それだけ、ばらつく。各校を一定基準で比較分析するだけの精度が保てず、公表に足るものにならない。教職員に新たな業務の負担を課す意義はない。

 ―県内での不参加は福山市だけでした。

 自主参加するかどうかは、学校設置者が判断するもの。市の責任で決めた。

 ―他の市町は、なぜ参加したのだと考えますか。

 それぞれの判断でされたこと。私からはコメントできない。

 ―参加を希望する保護者もいたのではないですか。

 当然、さまざまな意見があるだろう。業者への採点の委託も予算を試算して検討した。だが、文科省が抽出する学校と自主参加校の二つの結果が出ることになり、一律の基準で分析することは不可能だ。抽出方式では「各校の全国的な位置付けを知りたい」という保護者の期待に応えられない。

 ―全校参加だった昨年までの3年間の成果をどうみますか。

 福山市は積極的に結果を公表した。学力向上のために、どんな工夫が必要なのか真剣に考え、確実な改善への取り組みにつなげた。それは全校参加だったからこそだ。4月の初め、文科省に対して全校参加に戻してほしい、と伝えた。

 ―全国学力テストの代替策も含め、どう学力向上を図りますか。

 抽出方式でも、福山市全体の学力の傾向は把握できるはずだ。これに、県が毎年6月に全校を対象にして行う学力調査を活用し、学校ごとの学力状況をつかむ。二つの調査を組み合わせ、学力向上策に生かしていきたい。市立小中学校の約9割が参加している民間会社の全国調査も、引き続き利用していく。


クリック 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト) 文部科学省が2007年に始めた。09年まで全小中学校が対象だったが、10年から約30%の学校を抽出する方式に転換。抽出校以外は、市町村など学校設置者の希望で参加できるようにした。県内の公立校は抽出校を除く525校のうち452校が参加。福山市は、114校のうち約36%の41校が抽出校としてテストを受けたが、残る73校の自主参加は見送った。

(2010.5.3)


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