中国新聞


大竹の「親と子の本の広場」代表 杉嶋寿子さん
本で育てる言葉と心
読み聞かせ盛況 相談も


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まつりに参加した母親や子どもに絵本を紹介する杉嶋さん(右端)

 おもちゃで遊ぶ子ども。ひざにわが子を乗せて絵本を読むお母さん。廃園になった幼稚園が大にぎわいだ。大竹市南栄の「親と子の本の広場 あいいく館」。12日の絵本まつりには、親子連れを中心に約50人が訪れた。

 代表の杉嶋寿子さん(69)が「絵本は子どもの心を育て、親子のきずなを強める」と絵本を手に話す。ゲストとして招かれた木のおもちゃ店を営む金山清さん(62)=柳井市=も「絵本とおもちゃは子育ての両輪」と効用を説いた。周囲では夢中で遊ぶ子どもたちの笑顔が輝く。

 あいいく館は毎週土曜日に開館する。読み聞かせや手遊びなどを楽しみ、2500冊の蔵書も貸し出す。「本当に熱心に支えてくれる」というボランティアの活動があってこそ成り立っている。

 このたびニッセイ財団の地域活動を支援する事業に選ばれた。助成金60万円で床マットや机、おもちゃなどを充実させた。新たに7月から月1回、絵本の楽しみを学ぶ勉強会も計画している。「赤ちゃんから小中学生まで、いい本に出合ってもらいたい」。それは子育て支援にもつながっている。

 杉嶋さんが最初に杉の子文庫を開いたのは1970年。牧師の妻として大竹に移ってきて間もないころだ。日曜学校の帰りに寄ってもらえればと始めた。19年続いたが、転勤でいったんは途絶えた。その後、北海道や九州に赴任、行く先々で文庫開設に携わった。夫婦とも東京出身だが、夫の退職後、迷わず大竹に住もうと決めた。「絵本好きの仲間がいて、最も思い出に残る地だったから」。2006年12月、再び絵本文庫は動きだした。

 5歳の娘奈々ちゃんと利用する小泉昌子さん。「杉嶋さんは絵本のソムリエのよう。発達段階や季節にあった本を紹介してくれる。ベテランのボランティアの方もいるので子育ての相談もできる。ありがたい場」

 「家庭の問題や学校で子どもたちの現実が厳しいことも分かる」と杉嶋さん。だからこそ、「絵本を通して憩いの場を提供したい」との思いはますます強まる。

 「絵本には言葉と心を育てる力がある」。これからも、それを伝え続けていく。(古市雅之)

(2010.6.13)


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