中国新聞


育休明け医師を時短で正規雇用
広島の基幹病院で広がる


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妊婦の超音波検査をする羽原医師(左から2人目)

 ▽広島県が助成、復職促す

 広島市内の基幹病院で、育児休業明けの女性医師の短時間勤務を認め、正規雇用する動きが広がっている。復職を促し、医師不足にあえぐ現場の負担軽減を図る。広島県は本年度、短時間勤務の女性医師を正規雇用する病院に人件費を助成するモデル事業を始める。

 県立広島病院(南区)総合診療科の岡本和子医師(36)は今月、復職した。育児短時間勤務制度を使い、勤務は平日午前9時から5時間。他の医師より3時間短い。2008年度、県職員に導入された同制度の医師への適用は初めてとなる。

 時短勤務を希望する女性医師は、非常勤医師として復職するケースが目立つ。しかし、同制度を利用すれば、共済組合加入や賞与などの待遇が守られる。岡本医師は「育児と仕事が両立できてありがたい。いずれはフルタイムに戻り、後輩が制度を使うのを支えたい」と話す。

 羽原章子医師(33)は4月、広島記念病院(中区)産婦人科に正職員として復職した。育児短時間勤務制度を使い週2日、定時より2時間早い午後3時ごろ帰宅する。夜勤は月6〜8回に抑える。

 同科は羽原医師と常勤の男性医師2人が診察に当たっていた。羽原医師の育休に伴い、病院側は新たに医師1人を新規採用しようと試みたが、見つからず、広島大から代替医師の派遣を受けて乗り切った。横田康平婦人科医長(54)は「羽原医師の復職で、他の医師の夜勤が減り、体力的にも楽になった」と歓迎する。

 県医師会女性医師部会が05年、女性会員924人を対象に実施した意識調査(回収率49・9%)では、既婚者が多い40、50歳代の5割以上が「出産・育児のため勤務状況を変えたり、職場を辞めたりした」と答えた。同部会は「職場を離れて自信を失い、復帰できずにいる医師も多い」とみる。一方、医師国家試験合格者は現在、3分の1を女性が占め、女性医師の比率は高まっている。

 県は10月にも、女性医師を短時間正規雇用する病院に、人件費の一部を助成する制度を試行する。事業費は約500万円。県医療政策課は「女性医師のマンパワーを医師不足解消に活用する道を探りたい」としている。(田中美千子)

(2010.6.18)


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