中国新聞


廿日市の岡本礼子さん
絵画通し子育て支援
自宅で託児 悩み相談も


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「子育て中のお母さんの手助けになれば」。託児施設で幼児のお絵かきを見守る岡本さん(左)

 「何でも好きなように描いてみようね」。廿日市市佐方の画家岡本礼子さん(54)が、絵筆を手にした子どもを温かいまなざしで見守る。自宅マンションを改装し、幼児を一時預かりする「子育てサポートREI」には、毎日3、4人の子どもが集う。

 岡本さんは子どもがアドバイスを求めてくるまで、題材や描き方に口出ししない。思い思いに筆やはけを走らせる姿に、「決して上手でなくても、元気があふれる絵がすてき。子どもの感性を大事にしたい」とほほ笑む。

 市内の保育園で29年間、保育士として勤務した。「内向的な自分を表現できる」と、子どものころから絵を描くことが好きだった。働きながら東京都の短大通信課程で油絵を学び、1989年に卒業。展示会への出展などを続けてきた。

 2005年3月に2人の子どもが就職したのを機に、創作活動に専念するため退職。自宅にアトリエを開き、子ども向けの絵画教室を始めた。間もなく、付き添っていた母親が帰り際に見違えるほど明るくなったのに驚いた。「待ち時間に紅茶を振る舞っただけなのに。お母さんには、喫茶店でくつろぐ時間もないのに気づいた」

 岡本さんは、子どもが絵を描く間、母親の子育て相談に乗るようになった。笑顔になって帰る母親を見て、育児を支える仕組みづくりが必要と感じた。08年1月にはアトリエの隣室で託児施設を始めた。

 仕事や急用がある保護者から6歳以下の子どもを預かる傍ら「親子カフェ」も運営。母親が息抜きのために気軽に訪れる。母親同士で悩みを話し合って解決方法を探るプログラム「ノーバディーズ・パーフェクト」にも注目。大阪市であった進行役の養成講座を修了し、自宅での講座を始めている。

 一日中子どもから離れられず、周囲に悩みを打ち明ける相手もいない母親を多く見てきた。「専業主婦にこそ託児施設が必要」と話す。「仕事や育児をしながらでも、絵を描き続けたことで今の自分がある。お母さんが自分を磨くための時間を確保する手助けができれば」と願う。(村上和生)

(2010.8.1)


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