中国新聞


中国地方、広がる「院内助産」
産科医不足の負担軽減


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広島記念病院で、栗栖看護師長(中)の助言を受けながら楽な体勢を試す出産前の望月さん(左)(13日)

 医療機関内の助産師が中心的に分娩(ぶんべん)を担う「院内助産」が、中国地方で増えている。2007年に島根県の病院で初めて導入され、現在では少なくとも8施設ある。過重労働などで不足気味となっている産科医の負担軽減策の一つとしても期待されている。

 広島記念病院(広島市中区)は7月、市内の総合病院で初めて院内助産を始めた。和室1室を整備。妊婦は布団かベッドを選び、好きな体勢で出産する。助産師は出産前健診も担当。分娩は2人一組で手掛ける。医師も立ち会う。

 東京から帰省し、通院していた望月二枝(にき)さん(32)は23日に男児を出産。「健診も時間をかけて丁寧で、何でも相談できた。安心して出産することができた」と喜ぶ。同院の栗栖稲子看護師長(45)は「助産師のスキルアップにもつながる。将来は医師の心身の負担軽減にも貢献したい」と意気込む。

 中国5県などによると、広島県内では真野産婦人科(安佐北区)が07年8月に開始。このほか山口県2、岡山県1、島根県2、鳥取県1の計6施設が既に導入し、周南市の徳山中央病院も10月の実施を控える。

 産科医は、当直回数の多さや医療訴訟の増加などを背景に全国的に志願者が不足する傾向にある。必要に迫られて院内助産を始めた施設もある。

 島根県隠岐の島町の隠岐病院は06年4月から半年間、産科の常勤医が派遣されず出産を一時中断。翌07年4月、中国地方初の助産科を開設した。島内の妊婦の4割が利用するようになり、昨年度は40人に対応した。

 山口県立総合医療センター(防府市)も、近隣の産科が相次ぎ廃業。分娩が集中し始めたため、09年4月に踏み切った。助産師の役割を高めることで、医師が高リスクの分娩に集中しやすい態勢づくりを進める。

 厚生労働省も後押しする。整備費などの助成制度を08年度に創設した。医政局看護課は「助産師を有効活用し、医師の過重労働を解消したい」と支援を続ける構えだ。(田中美千子、衣川圭)

(2010.9.27)


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