中国新聞


既卒者の新卒採用拡大
広島銀「3年以内」応募対象
大学歓迎「再挑戦のチャンス」


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 広島銀行(広島市中区)は、2012年春の大学生の新卒採用で既卒3年以内の学生の応募を新たに受け付ける。厚生労働省の指針に沿った措置で、同様の動きは金融機関を中心に中国地方の主要企業に広がりつつある。卒業しても就職できない学生が増える中、大学は「再挑戦の機会が広がる」と歓迎する。

 広島銀は新卒者向けの採用試験で、09年3月以降に大学などを卒業した既卒者も対象とする。正社員として就労経験がない場合に限る。このほどホームページ上の募集要項を変更した。

 就職内定率が低迷する中、厚労省は昨年11月、「青少年雇用機会確保指針」を改正した。新卒採用について、少なくとも卒業後3年間は応募受け付けすることを企業に求めた。広島銀は導入理由について「厚労省の指針に従った」と説明する。

 金融機関ではこのほか、山陰合同銀行(松江市)と鳥取銀行(鳥取市)、呉信用金庫(呉市)が12年春採用から新たに新卒者枠で既卒者の応募を受け付ける方針を決定。山口フィナンシャルグループ(下関市)も12年春からの導入を検討中という。

 検討の動きは他の業界にも広がっている。中国電力は「意欲や能力がある多くの人に応募機会を提供することは有益で、前向きに検討している」とし、近く新たな採用計画をまとめる。マツダも「新卒扱いを拡大する方向で検討を進めている」としている。

 中国地方の各労働局によると、昨年3月に就職先が決まらずに卒業した大学生は1989人で、前年比40・8%増となった。若者をめぐる雇用状況が深刻化する中、大学や既卒者は企業の動きを前向きに受け止める。

 広島修道大(広島市安佐南区)の大津章キャリアセンター長は「あえて留年して新卒を維持する学生もいる中、既卒にチャンスが広がり学生には朗報」と歓迎し「名目だけでなく実態の伴う動きになってほしい」と望む。

 既卒者の訪問が目立つハローワーク広島の学生職業センター(中区)。2年前に大学を卒業した安佐南区の男性(24)も「選択の幅が広がっていい」と受け止める。

 山口大学生支援センター(山口市)の平尾元彦教授は、既卒者の採用拡大について「総論としては良い動き」とした上で「既卒と新卒で競争がより激しくなる懸念もある」と指摘する。(永井友浩、新山創)

(2011.1.25)

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