中国新聞


福山の小児2次救急 患者受け入れ日削減
保護者 広がる不安


 ■月3、4日 市外に搬送 輪番医師の確保進まず

 福山市の小児2次救急病院が3月、毎日だった患者の受け入れ日を減らした。月3、4日は市外の病院に頼る事態が続いている。医師不足や軽症患者の集中などが要因だ。早期改善の見通しは立っておらず、市内の保護者には緊急時の不安が広がる。

 福山市内では、4病院の医師が1人ずつ輪番で夜間(午後6時〜翌午前8時)と休日を担う。国、県、市は、民間病院には1回当たり計約2万6千円を基準に補助して24時間態勢を整えてきた。小児2次救急病院がない府中市、神石高原町、隣県の井原市、笠岡市などからも搬送され、2009年度は計約6500人が受診した。

 輪番日は市と4病院が協議して割り振る。4月以降について協議した際、4病院が「医師が減り、負担の限界だ」などと訴え、日数削減が決まった。

 市によると、09年度に計17人だった輪番担当の医師は現在、計13人。退職や高齢化で医師が減り、新たな確保が進まない。ある輪番病院は「宿直1回の来院患者は約20人。看護師を含めて昨年は1人当たり月3回の宿直もあり、負担が増した」と明かす。

 ▽「約8割が軽症」

 共働き家庭の拡大に伴って夜間来院も増えた。別の輪番病院は、「約8割が軽症患者。医師は仮眠できず相当疲弊する」という。

 市は本年度、非常勤医師の手当を4病院の最高額にそろえる助成制度を新設。年24回の派遣分の178万円を予算化したが、「全国的な医師不足で派遣医師は決まっていない」(市保健部)という。

 ▽ぎりぎりの状態

 福山市内の病院が患者を受け入れない「空白日」は、主に尾道市内の病院へ患者を搬送する。この病院は小児科医師7人がおり、当直は1人でこなす。ただこの病院も「重症患者が相次いで非番の医師を何人か呼ぶ場合もある。余裕はない」とぎりぎりの状態だ。福山市から岡山県内に搬送したケースもある。

 2歳と0歳の2児を持つ福山市横尾の主婦岡崎ともこさん(34)は「病院が遠いと、いざというとき不安」と顔を曇らせる。子育てを支援する同市神辺町のNPO法人こどもステーションの奥野しのぶ理事長(48)は「軽症なら経過を家庭で見守る市民側の意識も大事だが、医師確保も急いでほしい」と求める。

 市は5月、改善に向けて県や府中市、市医師会などと協議会を設けた。医師増員▽軽症患者の来院抑制▽病院への補助拡充―などが課題に挙がっている。市保健部の佐藤雅宏総務課長は「現状を把握して、中長期的な改善策を考えたい」と話している。(水川恭輔)


救急医療体制 症状に応じた適切な医療のため3段階に分かれる。在宅当番医などが担当する初期(1次)救急医療に対し、2次は入院を要する重症患者を診療。県指定の拠点病院で受け入れたり、いくつかの病院が輪番で対応したりする。3次は、さらに重篤な症例に対応する。

(2011.6.19)


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