中国新聞


学校と地元企業、連携強化
教員が人材紹介、実習機会増やす 福山市内
障害者雇用率、県平均下回る


   

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陳列棚を整頓する中田さん

 福山市内で障害者の法定雇用率(全従業員数の1.8%)を満たした事業者の割合が昨年6月時点で46.9%と、県平均(51.0%)を下回っている。景気低迷の中、小売りやサービス業などで伸び悩みが目立つ。雇用の拡大に向け、地元の企業と特別支援学校が連携を強めている。

 「いらっしゃいませ」。同市のドラッグストア、ププレひまわり道上店に勤めるパート社員中田明子さん(19)は大きな声で顧客を迎える。3月に福山北特別支援学校を卒業し、4月に入社した。

 商品を補充し、棚の前面にそろえるのが主な仕事。来店者に何か尋ねられれば、先輩の社員を呼ぶ。中田さんは「そろえた商品を手に取っていただけるとうれしい」と話す。

 中田さんの採用は同校と県中小企業家同友会福山支部の約30社が2009年につくった情報交換の会議「福山北ジョブサポートネットワーク」がきっかけだった。同校の教員が会議に加わる同社に中田さんを紹介。同社は在学中に3回、店舗での実習を受け入れた。

 市内の業種別の法定雇用の達成率は「製造業」が51・5%に対して「卸・小売業、宿泊業、飲食サービス業」は34・4%と遅れが目立つ。同社人事総務部は「接客に向くか、どうかの判断が、履歴書と面接だけでは難しい。教員の紹介や実習を通して採用を増やしたい」と説明する。

 同社が法定雇用率を満たすには、現在の10人の雇用をさらに5人程度増やす必要がある。昨年7月、法定雇用の算定基礎の従業員数に短時間労働者も含まれるようになり、義務人数が増えたからだ。ハローワーク福山も「ことし6月時点の達成率は短時間労働者が多い小売業などで下がる見通し」とする。

 一方、同所に求職登録する障害者も年々増え、現在約800人に上る。22日の市内での障害者就職面接会は38社計76人の求人に、201人が参加した。足に障害がある男性(36)は「昨年も決まらなかった。ことしも不安だ」と漏らした。同所の中原滋樹業務部長は「雇用の不足が顕著な事業所に、雇用計画作成を指導するなど対策を進める」と話す。

 さらに福山北ジョブサポートネットワークも同校と企業の連携策を強めている。6月には同校の生徒の学習成果の発表会を初めて開き、12企業が参加。8月には求められる技術や新たな就労先を探るため、教員38人が地元企業4社を見学するバスツアーを実施した。

 企画した県中小企業家同友会障害者委員会の高橋宏之委員長は「それぞれの障害者の個性を生かせば働ける場はどこかの職場に必ずある。経営者と教員が互いの現場を学び、就労の場を広げたい」と話している。


障害者の法定雇用率 障害者雇用促進法は、従業員56人以上の事業者に全従業員の1・8%以上の障害者の雇用を義務付ける。法改正で2010年7月、未達成の場合に高齢・障害者雇用支援機構に納付金を支払う対象となる事業者が「従業員301人以上」から「201人以上」に拡大された。納付金額は不足1人当たり月額5万円。同月、雇用義務人数の算定の基礎となる従業員数に週の労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者も加わった。

(2011.9.25)


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