中国新聞


【天風録】「手帳」作戦



 「少子化危機突破タスクフォース」。特殊任務部隊、と訳せるだろう。内閣府の作業チームの名称である。おおげさで少々物騒なのは、挑む課題が困難な証しか。委員の大学教授やタレントらが新たな作戦を決めた。

 若い世代にターゲットを絞り、女性手帳で啓発するという。妊娠や出産の「適齢期」といった知識を盛って。子宮頸(けい)がんワクチンを接種する10代から大学入学時、成人式などで、何度も配る想定らしい。スマホ向け情報も出す。

 母子健康手帳の入門編といったところ。 来年度にも配布したいようだ。人生設計に役立てて―。そんな「親心」のつもりだろうか。だが、生き方への口出しや適齢期の押し付けなら、「大きなお世話」の声も聞こえてきそう。

 大事なのは、子どもを持ちたい気持ちが芽生えたときに、産める条件がそろっているかどうか。雇用の安定による心のゆとり、医療や保育のバックアップ…。整えるべき環境はたくさんある。

 作戦も練り直してはいかが。 一番の難敵は男性の意識のはず。パートナーとしての自覚や家事分担、育メンの心得を一つ一つ腹に落としてもらう。まずは「男性手帳」。それこそ危機突破の鍵に違いない。

(2013.5.9)


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