中国新聞社
(1)ことの始まり
突然患者に…募る不安

2001/5/6

 訪問看護婦の私は日々、がん患者さんや在宅療養者のお宅を、軽自動車で回っている。以前から、腰の痛みが気掛かりだったが、「職業病だあ」といいながら、車から降りると「イチ、ニイ、サン」と、掛け声だけ大きく腰を伸ばしていた。

 ある日、腰から背中にかけて後ろに引っ張られるような痛みを感じ、「おかしいな。いつもと違うな」。自分の今もっている病気を頭に思い浮かべながら、まず、ホームドクターを訪ねた。

 以前、胃カメラ、腹部超音波(エコー)検査をしてもらっているので、先生の「まだ砂みたいだけど、胆石になるかも…」との説明を思い出したのだ。残業で、外食が多い生活を反省しつつ、診察台で待つ。

 内科的には異常なし。しかし、先生は「あれ?卵巣が大きい。九センチもあるよ。僕は専門じゃないからよく分からん。婦人科の先生に行ってごらん」。すぐ、かかりつけの婦人科へ走った。

 「タイヘン。卵巣嚢腫(のうしゅ)が倍になってるんです」

 「手術した方がいいわね」

 「早い方が?」

 「そうね」

 「どこの病院で手術したらいいですか?」

 「あなたが、したいところで」

 こういう時、○○病院の△△先生へといった紹介は、なかなかしてもらえないものだ。

 「病院が決まったら、紹介状書きますから」

 そう言われても、私だってどこの病院がいいか見当をつけて決めるには、情報を集める労力もいる。いきなり患者の立場になって、その選択が難しいことを初めて実感し、不安で右往左往する患者さん、家族の姿が二重写しになった。

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