中国新聞社

(33)五十肩「時間くれば治る」にホッ

2001/12/16

 母の介護が終わって、気が付くと外は秋。平和公園の樹木も一斉に色づきはじめ、絵はがきのような風景になっている。「あー、命ははかないけれど、自然はすごいな」と、大きなため息が出る。

 「少し、休んだら…」とみんなが勧めてくれるが、なんだかんだと気になることがたくさんある。母がいなくなったことは悲しい。でも、現実に私はこれからも生きていかなくてはならないのだ。退院後、まだ片付いていないわが家の整理も残っている。

 入院した時のまま、いろいろな物が転がっている部屋を見渡すと、また違ったため息も出た。片付けようという気持ちはあるのに、体がいまひとつはっきりしない。特に右肩を動かすと痛いし、手が上がらない。脚の付け根とひざも痛いので、正座ができない。

 抗がん剤の後遺症なのだろうかと、受診の時に尋ねてみた。「遅発性の関節痛や筋肉痛は起こらない」とのことだった。すると、母の介護で急に体を使ったせいかもしれないと思いながら、整形外科を受診する。

 「肩関節周囲炎、つまり五十肩ですね。脚の付け根は、手術したからじゃないの。ひざは、使わなかったからかなあ?」と、首をかしげながらいう。肩の痛みの説明は、この秋に五十歳を迎えた私にはぴったりで、妙に納得がいった。

 しばらくすると反対の左肩も痛くなった。休んでいても、左右に寝返りすると、「イタタ…」と声を上げてしまう。熟睡もできない。化学療法をしている時とは違う疲労感で、憂うつになる。

 友人や知人が「温めるといいよ」「マッサージがお薦め」「整体が良く効くよ」といってくれる。本当に痛みで毎日困っていたら、「行ってみよう」という気になるのが当たり前だろう。

 末期がんの患者さんがよく、たくさんの民間療法を試したりしていることを、訪問看護のなかで知っていた。がんと診断されると、さまざまな薬や補助食品を、あっという間にいろいろな人が持ってきてくれる。「わらにもすがる」気持ちは、よく分かる。

 「痛みはつらいけど、時間がくれば治るのよ」。五十肩を経験した人に言われたら、安心して、気持ちも落ち着いた。ありがたい一言だった。

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