「おむすびガツ〜ン」   その1 草とりのお礼に…

 むかしむかし、山(やま)おくの村(むら)におじいさんとおばあさんが住(す)んでいました。

 ある春(はる)の日(ひ)のこと、おじいさんは山の畑(はたけ)の草(くさ)をとりに行(い)くことにしました。

 そこで、おばあさんにたのみました。

「おむすびを、ひとつつくってくれないか」

「はい、はい、まかせてくださいな」 イラスト

 おばあさんは、ギュッ、ギュッ、ギュッと、大(おお)きな大きなおむすびをつくりました。

 おじいさんはおむすびをせおって、せっせと山道(やまみち)を登(のぼ)りましたが、山の畑についたときにはすっかりくたびれてしまいました。

「やっぱり坂道(さかみち)は、こたえるわい」

 せなかの包(つつ)みをおろして、こしをとんとんたたきました。

 それから、山の畑を見回(みまわ)して、

「わしのかわりに、この畑の草とりをしてくれるものがおったらなあ。もしも畑をきれいにしてくれたなら、そのお礼(れい)には」

 ここまで言(い)ったとき、そばの木(き)のかげからサルが出(で)てきて、あっというまに仕事(しごと)をしてしまいました。

「おじいさん、見(み)てくれ」

 サルはとくいげに言いました。

「畑はすっかりきれいになっただろう。このお礼に、むすめさんをひとり、おれのおよめにくれないか」

 おじいさんは、こまってしまいました。

「ざんねんながら、それだけはできない」

 うでぐみをして、きっぱりとことわると、

「なんだって。さっきは、草とりのお礼をするって、言ったじゃないか」

 サルが、おこったように言いました。

「ごめん、ごめん。じゃが、わしにむすめはおらんのじゃ。さっきは、お礼におむすびを半分(はんぶん)あげると言うつもりだったのじゃよ」

 おじいさんは包みをひらいて、大きなおむすびをとり出して、半分にしようとしましたが、

 おむすび、ガツ〜ン

 おむすびはとてもかたくて、なかなかわれません。

「おれがやってみよう」

 サルに言われておじいさんがおむすびをわたそうとしたとき、おむすびはころりと転(ころ)がって。

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