「おむすびガツ〜ン」   その3 カニさんお願い

 大(おお)きなかたいおむすびを持(も)ったおじいさんとサルとネズミは、ぞろぞろぞろと川(かわ)のほとりまでやってきました。

「やあやあ、おのおのがた。ここまでいったいなにしに来(こ)られた」

 とつぜん、声(こえ)が聞(き)こえました。 イラスト

 見(み)ると、川岸(かわぎし)のすなの上(うえ)で、カニがぱちぱちとはさみをふりあげて、みんなをにらんでいます。

「おむすびもかきの種(たね)も、われらは二度(にど)と見とうはない」

「あの時(とき)とは、ちがうんだ」

 サルがあわてて言(い)いました。

「うちのばあさんのにぎったおむすびがあまりにもかたいので、こまっているんだ」

 おじいさんも、つづけて言いました。

「きねでたたいてみたんだが、こいつはびくともしない。あとは、カニさんのはさみの力をかりるしかないと思(おも)って、みんなそろってやって来(き)たのさ」

 ネズミは、しっかりわけを話(はな)します。

「なあんだ。そういうことか」

 カニが、安心(あんしん)したように答(こた)えました。

「そういうことならば、協力(きょうりょく)するにやぶさかでない」

「こいつ、なに言ってるんだよ」

 サルが早口(はやくち)でまくしたてました。

「やぶの坂(さか)なら、いまみんなで通(とお)ってきたところだい」

「なにを? おぬし、いまだにわれらの言うことがわからぬか? あの時もじゅくしたかきをとってくれとたのんだのに」

 カニが、はさみを高(たか)くふりあげました。

「まあ、まあ、まあ」

 おじいさんがふたりの間(あいだ)に入(はい)ります。

「どうだろう。そのりっぱなはさみ、ここで役(やく)にたててはくれまいか」

 ネズミも頭(あたま)をさげてたのみました。

「そこまで言われるのであれば」

 カニがぶつぶつとうなずきました。

 それから、ゆっくりとはさみにおむすびをはさんで切(き)ろうとしましたが、

 おむすび、ガツ〜ン

「いたたたたたたたっ」

 カニが悲鳴(ひめい)をあげました。

「やっぱりだめか」

 おじいさんが、ため息(いき)をつきました。

「いつになったら食(た)べられるのやら」

 サルとネズミは顔(かお)を見合(みあ)わせて、つぶやきました。

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