動員学徒慰霊塔

 原爆ドーム(広島市中区)のすぐ南に立つ。高さ12メートルの5層の塔は有田焼の陶板で覆われ、正面には、尾道市出身の彫刻家、円鍔勝三さん(1905~2003年)が手掛けた「平和の女神」の像が置かれている。

 塔の中心の柱には、戦争の犠牲となった動員学徒を慰霊する灯明がつくようになっている。

 第2次世界大戦中、軍需工場や食糧増産などの勤労奉仕に動員された学生や生徒は、全国で300万人を超す。戦争が激化するにつれ、働き盛りの男性の大半が兵士となり労働力が不足。それを補うために駆り出された。

 約1万人が空襲などで死亡。うち約7200人は原爆の犠牲者だ。塔の奉安庫には、空襲による死者も含め6874人分の名簿を納めている。

 死傷した動員学徒への国家補償などを求め、57年に発足した広島県動員学徒等犠牲者の会(事務局・広島市南区)が、慰霊塔の建立を進めた。悲劇を語り継ぎ鎮魂しようと、全国に協力を呼び掛け、67年7月、3年がかりで完成させた。

 塔の左右には、縫製作業など動員学徒が働く様子を描いた4枚のレリーフを掲げている。その背後に、会の活動や塔建立に協力した全国351校の動員学徒の出身校名を刻んでいる。

 毎年8月6日、塔の前で原爆追悼式が開かれる。

(2012年6月4日朝刊掲載)