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ヒロシマ・ナガサキ ZERO PROJECT

ハーシーの孫が70年目の訪問 被爆惨状伝えた「ヒロシマ」著者 故谷本牧師長女と対面

 被爆の惨状をいち早く世界に伝えたルポ「ヒロシマ」(1946年)を著した米国のジャーナリスト、ジョン・ハーシー(1914~93年)の孫で、アーティストのキャノン・ハーシーさん(37)=ニューヨーク=が6日、初めて広島市中区の原爆資料館を訪れた。祖父がのこした仕事を次世代につなぐ表現を模索しようと、5日から同市に滞在している。(明知隼二)

 この日は、「ヒロシマ」に登場する谷本清・広島流川教会牧師(86年死去)の長女、近藤紘子さん(70)=兵庫県三木市=と対面し、ともに資料館を見学。資料館内で、被爆直後の市内のパノラマ模型や「人影の石」、被爆瓦などを約30分かけて見て回った。「ヒロシマ」で描かれた谷本牧師の被爆状況や、生後8カ月で被爆した近藤さん自身が出血や高熱など放射線の急性障害に苦しんだことなどを聞いた。

 キャノンさんは「祖父のこと以上に、この場所で苦しんだ人たちについてもっと考えてみなくては」と真剣な表情で語った。9日まで広島に滞在し、10、11日には長崎市を訪ねる。

 キャノンさんは写真を使った絵画や版画作品などを手掛けている。今後、3月末に日米の平和団体が両市で開くアートワークショップに向けた作品制作に入るという。「核兵器のない未来のために、アートで力強いメッセージを発したい」と話している。

 ワークショップの様子などは、同行した映像作家の西前拓さん(52)=ニューヨーク=がドキュメンタリー映画にまとめる。

ジョン・ハーシー著「ヒロシマ」
 谷本清牧師たち被爆者6人へのインタビューを基にしたルポ。掲載した1946年8月の米「ニューヨーカー」誌は1日で30万部を売り上げたという。日本語訳は49年に刊行された。現行の増補版は、85年の広島再訪後に書いた「ヒロシマその後」を収めている。

(2015年3月7日朝刊掲載)