広島都市圏で500世帯以上が避難

'99/7/2 夕刊

 土石流やがけ崩れのつめ跡が生々しい広島市や周辺の災害地には 二日朝、再び雨が降り始め、住民の不安が高まった。市の避難勧告 は、まだ行方不明者が残る佐伯区五日市町など十一カ所の約百五十 三世帯。身の回り品だけを抱えて避難所で一夜を過ごした五百人余 りの被災者には疲れも見える。二次災害への緊張もよぎり、住民の 表情が曇る。

【佐伯区五日市町】

 八幡川沿いの五日市町内で勧告を受けたのは九十世帯余り。河内 小学校体育館では、九十二人が一夜を過ごし、疲れきって毛布をか ぶったままのお年寄りも。

 下流の高台にある老人保健施設でも、約百六十人が不安な朝を迎 えた。早朝から知人と電話連絡したり、テレビニュースの天気予報 を食い入るように見つめた。同町上河内、会社員岡田国雄さん(58) は「不安で寝付けなかった。道路が寸断されて家に帰れず、ここで じっとしているしかない」と肩を落とした。

 雨の合間を縫い早朝から、家財道具の運びだしのため自宅へ戻る 住民も。上小深川地区の町内会長坂本頼之さん(63)は涙ながらに 「仮設電話を付けるなど、知人と連絡を取りやすくしてほしい。雨 がどうなるのか」。「家を守る」と半壊した自宅にとどまる主婦 (77)もいた。

【佐伯区屋代】

 勧告を受けた八世帯三十五人に加え、近所の住民も加えた約百人 が広島工業大学体育館に避難。夜明けとともに、自宅の片付けに戻 る姿も。屋代三丁目、無職田中ミチエさん(76)は疲れを見せながら も「雨が心配だが、頑張らないと」。

【安佐南区沼田町・伴東】

 伴東一丁目の団地の二十九世帯に午前三時半ごろ避難勧告が出さ れ、二十一世帯四十七人が近くの集会所へ。和室で毛布にくるまっ たままでテレビに見入る姿も。住民に、疲労感が漂った。

【廿日市市】

 上平良、地御前、佐方の市内三地区、十一世帯に早朝、避難勧告 が出た。上平良地区では、農業用調整池が飽和状態になり、決壊の 恐れが出たため八世帯十九人が、小高い丘の民家に身を寄せた。無 職藤井司馬人さん(80)は「いつまで避難が続くのか」と言葉少なに 話した。

【写真説明】避難所の小学校体育館で不安と緊張の夜を過ごした住民(2日午前8時半、広島市佐伯区五日市町の河内小)


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