被災地、復興へ向け懸命な作業/広島県

'99/7/4 朝刊

 「さあ復興だ」。集中豪雨で大きな被害、犠牲者を出した広島県 では三日、晴れ間も広がり、被災地の住民たちが、土砂や流木など の撤去にあたった。駆けつけた親類や会社の同僚、災害ボランティ アも交え、強い日差しの中、泥まみれの作業が続いた。

 土石流に襲われた広島市安佐北区安佐町鈴張、譲羽(ゆずりは) 団地(百四十八世帯)では、住民は団地ふもとの鈴張小学校体育館 で避難生活を続けながら、壊れた家の片付けや、道路の清掃作業に 当たっている。自治会で小型ショベルカー七台を借りた。団地内に 住む土木会社経営谷本富さん(56)もショベルカーを提供して、従業 員六人と道路の土砂を取り除いた。同様に土石流の被害を受けた団 地入り口の民家も、親類や知人らが懸命の復旧作業を続けた。

 団地内には裏山から流れ出た大量の土砂や岩、流木があちこちに たまったまま。団地自治会長の清家猪佐美さん(70)は「行政に早く 支援をお願いしたい。ショベルカーのリース代など復旧費も何とか してほしい」と悲痛な表情だった。

 土石流で多くの民家が被害を受けた広島市佐伯区屋代地区でも、 住民らが早朝から自宅の片付け作業に奔走。同区屋代三丁目、会社 員網本信一さん(25)方には、職場の同僚八人や親戚ら計約二十人が 駆け付け、土砂をかき出す作業などををした。

 木造二階建ての網本さん方は、土石流で一階部分すべてに土砂が 流れ込んだ。同僚らは、ひざまで泥に埋まりながら、職場などから 持ち込んだスコップやくわを手に、屋内の土砂をかき出していた。 休暇をとって作業を手伝った同僚の松永賢也さん(26)=広島市南区 堀越三丁目=は「少しでも力になればと思って駆け付けた」と汗を ぬぐっていた。

 河岸が崩壊した広島市佐伯区利松一丁目の石内川では、地元建設 業者らが、率先して河岸道路の応急処置に当たっている。

 川の側道の市道が、約三メートル、長さ四十五メートルにわたっ て崩れ落ちた。地元住民が市や消防に通報したものの、他の被災地 への対応で手いっぱい。「このまま放って置くと崩落が進む」と、 地元の建設業者が復旧作業に乗り出した。

 地元町内会長の中川和之さん(59)は「あのままだと、降り続く雨 で住宅地が危険だった。地元のみなさんの素早い対応に感謝してい る」と話していた。

 被災者の避難場所にもなっている広島市佐伯区三宅二丁目の広島 工大は、集中豪雨のあった翌日から、学生にボランティア参加を呼 び掛ける張り紙を学内に掲示している。

 掲示板を見た工学部四年高田正章さん(22)は三日、講義を終えて 初めて現地入り。約三時間、民家の土砂や荷物の運び出しを手伝っ た。高田さんは「軍手や長ぐつなど汚れてもいいスタイルで、スコ ップを持っていないと役に立たない。これからも時間の許す限り参 加したい」。

 昨夏の集中豪雨で被害を受けた栃木県那須郡那須町からは、災害 を契機にできた「町水害ボランティアセンター」事務局のメンバー らが、広島市に駆け付け、中区の市ボランティア本部などを訪れ た。

【写真説明】被害を受けた譲羽団地入り口の民家で、懸命の復旧作業をする人たち(3日午後3時、広島市安佐北区安佐町鈴張)


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