来年新館 理念を強調
「二人が仲良くするためにはどうしたらいいかな」。館内の研修室で、肌の色の異なる二体の人形を両手に持った大塚信館長(56)が園児たちに語りかける。最初は距離を置いていた二体を徐々に近づけ、隣に並べる。遠足などで訪れた園児に対して大塚館長が必ず行う「授業」だ。
「人それぞれに違いがあり、それを認め合う。単純なことだが難しい」と大塚館長。ホロコーストは人間の心に潜む差別意識や偏見が引き金となった。戦争の愚かさと命の尊さを知り、平和をつくる心を育てようと、記念館は若い世代への教育に力を入れてきた。
全国から学校・施設700
記念館にはユダヤ人強制収容所のガス室で命を奪われた幼い子の靴、囚人服など約七百点の遺品、資料が並ぶ。全国から訪れた学校・施設は十年で約七百に上る。
二年前から年一回、園児を連れて来る同市加茂町のひまわり保育園。繻エ芳子主任(52)は「同世代の子に起こった悲劇を知ったことで、子どもたちの会話に相手の立場を考える言葉が増えた」と成果を話す。
平和教育への思いをさらに追求しようと今、来年オープンを目指して新館建設計画が動きだしている。近くの駐車場に予定する二階建て延べ八百二十五平方メートルは現在の五倍の規模。修学旅行シーズンには研修室が込み合うほど来館者があり、二年前から構想してきた。
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ホロコースト記念館を訪れ、思いやりの大切さを学ぶ保育園の園児たち |
米から写真800点購入
メーンの展示品は、大塚館長が今春、米ワシントンに渡り、ホロコースト記念博物館で購入した写真約八百点。親と引き離されて泣き苦しむ姿、迫害を受けながらたくましく生きる姿…。子どもの悲しみや希望をとらえた写真を中心に選んだ。
オーストラリア、ポーランドなど六十カ国の知人らにも手紙で協力を呼び掛けた。強制居住地区の建物の壁や差別の印として使われた「黄色い星」の布など、新たに三百点の資料の提供を受ける予定だ。
「子どもたちの心に平和の大切さを訴える記念館を目指したい」。大塚館長は力を込める。
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