「脅威に対する抑止」 4段階の削減方法提示

ヘンリー・スチムソンセンター報告書(95年)



 米国の首都ワシントンにある民間のシンクタンクであるスチムソ ンセンターが「冷戦後の核兵器の役割とその危険について根本的な 見直しを進めよう」と、一九九四年一月に元軍高官や政治家、学者 ら十七人に検討を依頼。北大西洋条約機構(NATO)元総司令官 だったアンドリュー・グッドパスター氏を議長に一年余をかけ「変 わりゆく米国の核姿勢」と題してまとめた。

 報告書では「新しい時代における核兵器の唯一の軍事的役割は、 他の核兵器の脅威に対する抑止である」と説明。その目的のために は「現状よりはるかに少ない核弾頭で対応できる」と強調する。さ らにすべての核保有国が段階的に核兵器を削減し、やがては地上か ら大量破壊兵器を完全になくすことが米国の安全保障にとっても 「最善」であるとしている。

 また、核拡散防止条約(NPT)の目的などに触れながら「米国 の核兵器への永続的な依存は、核兵器を獲得しようとする国々に対 し、持たないようにと説得する国際社会の努力を弱めるものであ る」とし、核軍縮を進める最も重要な理由に挙げている。

 具体的な削減方法として四段階を示す。まず第一段階では、米国 とロシアが互いの破滅を意味する「相互確証破壊」の関係から「現 実的な協力」の方向へと進み、相互の核弾頭を約二千個まで減ら す。

 第二段階では、米ロに加え、英国、フランス、中国の核保有五カ 国が核弾頭をそれぞれ数百にまで削減。第三段階では潜在的核保有 国をも含めて数十個にまで減らし、第四段階で地上から核兵器を全 廃する。

 しかし、現状では核兵器の廃絶が達成できるかどうかは明確では ないとしており、仮に可能でも確実に数十年はかかるだろうと見て いる。